新型コロナウイルス感染が低年齢の未就学児にも広がる中、園児のマスク着用を巡り、保育現場や保護者が対応に苦慮する。感染拡大に一定の効果はあるものの、装着の徹底が難しく、呼吸や意思疎通への支障が懸念されるため。専門家は息苦しくなりがちな未就学児の特性を理解し、大人がマスクと上手に付き合う環境を整えるよう求める。
(多賀芳文)
22日午前、松江市北堀町の嵩見保育所では短い晴れ間を見計らい、マスクを気にしないで済む園庭での運動時間を設けた。大谷いづみ所長は「子どもがマスクを着ける状況は保育者として常態化させたくない」と感染拡大の収束を願った。
島根県によると、感染拡大第6波の新規感染者のうち10歳未満は17%で、第5波に比べ7ポイント増えた。年明けからは県内の児童福祉施設でクラスター(感染者集団)発生が相次ぐなど低年齢層への広がりが目立つ。
国が2歳未満を除く保育園児のマスク着用を推奨することもあり、県内の保育施設では対策強化が進む。
松江市内のある保育園は保護者同意の上で2歳以上の園児について「可能な限りの着用」を求める。ただ管理者は窒息リスクや体調、衛生管理が気がかりだと話す。
保護者も複雑な思いを抱える。医療従事者で4歳児の母親(37)=松江市在住=は頻繁にマスクを触ったり着用を嫌がったりする子にとって「予防効果はないと思う」と懐疑的。子どもの中でもマスクが常態化し、同調圧力が生じることを懸念する声もある。
幼い子どものマスク着用を巡り、県立大人間文化学部の前林英貴准教授(小児保健学)は、保育者や大人が留意すべき点を挙げる。
まず、未就学児の体重当たりの酸素消費量は成人に比べて約1・5倍で、呼吸数が多くなることで息苦しさは成人を上回ると指摘。さらに、相手の表情を見ながら対話する子どもにはマスクは障壁となり、発達やコミュニケーションに支障が出る恐れがあるという。
前林准教授は感染予防機能を認めながらも、保育施設では職員が意識的にマスクを外し、顔を見せる時間を設けるなど「メリハリある対応をしてほしい」と助言する。子どもはただでさえコロナ禍のストレスを抱えているとも強調。着用を強要せず「外したりずらしたりしても注意するのではなく『苦しいのだろう』と想像し、対応してほしい」と説く。