北京冬季五輪が閉幕した。少数民族ウイグル族に対する中国の人権侵害を理由に、米国が主導した「外交ボイコット」に欧州の主要国、さらに日本も同調した。
新型コロナウイルスのオミクロン株による感染が世界的に広がる中での開催となったこともあり、祝祭感あふれる大会とはならなかったが、91カ国・地域から参加した約2900人の選手が熱戦を繰り広げた。日本は過去最多のメダルを獲得し、冬季競技の裾野の広がりと実力の向上ぶりを示した。
15歳のフィギュアスケート女子選手に浮上したドーピングの疑惑、競技ウエア規定違反によるスキーのジャンプ混合団体での5人もの記録抹消、平野歩夢選手が金メダルを獲得したスノーボード・ハーフパイプでの不明確な主観的採点など多くの問題があった。
国際オリンピック委員会(IOC)と各国際競技連盟は課題を重く受け止め、問題の検証と解消に取り組まなければならない。より公平・公正で、一般視聴者にとって分かりやすい五輪を目指し、改善の歩みを進めてほしい。
IOCはフィギュアスケート女子の優勝候補だったロシア・オリンピック委員会のカミラ・ワリエワ選手のドーピング疑惑に直面した。スポーツ仲裁裁判所に出場差し止めを求めたが敗訴した。
ところが、ワリエワ選手は訴訟の対象となったこと、さらに疑惑を巡る報道が国際的に拡大したことで、明らかに大きな重圧を感じ、失敗を重ねてメダル獲得を逃した。
失意の涙にくれる新鋭をコーチが厳しく〓(口ヘンに七)る様子は、IOCの会長が会見で批判するまでもなく、多くのテレビ観戦者を驚かせ、失望させたに違いない。
過去に組織的なドーピングを進めたロシアはIOCの制裁を受け、国としての正式な選手団の参加は認められていない。今回の重大な規定違反の疑いは今後、世界反ドーピング機関によって解明され、新たな制裁を受ける可能性が十分にある。
ジャンプスーツの規定違反の問題は各国がしのぎを削って好成績を追求するあまり、尊重しなければならない競技規則をおろそかにした結果だろう。
ペナルティーを科せられた4チームとも、検査の基準と方法について、正式な抗議は行わなかった。つまり自分たちの非を認めたのだ。
摘発と、摘発逃れの小細工が繰り返されるようでは、競技はいずれ信頼を失う。高梨沙羅選手の涙を教訓に、日本は強豪チームの先頭に立って襟を正すべきだ。
平野選手のハーフパイプでの金メダルが最終3回目に決まる直前、2回目の演技での得点があまりにも低かったことに、疑問の声が広がった。
採点は「総合的な印象」という審判の主観でなされるという。フィギュアスケートのように、それぞれの技について難易度が定められ、技術点と、演技の完成度を数値化する、客観的で具体的な評価の採点方法に改めるべきだ。
これらの問題とは別に、地球の温暖化により、冬季スポーツの将来を懸念する声は各国で高まる。国際スキー連盟とIOCは、人工雪をつくり出してコースを整備する作業の環境への影響について、丁寧な説明を続け、市民の理解を得なければならない。