鳥取県伯耆町須村の植田正治写真美術館で10日、植田氏(1913~2000年)が世界的な写真家として最も輝く1970年代の作品を集めた企画展が、始まった。当時の写真専門雑誌などに掲載され、注目された144点のオリジナルプリントが、来館者の好奇心を揺さぶる。7月11日まで。
「小さな伝記」「写真の季節」「風景の光景」の3部構成。演出写真で高い評価を受ける一方、リアリズム写真の台頭で行き詰まっていた植田氏が自信を取り戻し、意欲的に撮影していた70年代前期から後期の代表作が並ぶ。
名機のハッセルブラッド(6×6センチ判)一眼レフカメラで全作品を撮った「小さな伝記」シリーズは、山陰の風景や子どもを被写体にモノトーンの世界観を表現。何げない日常の中で息づく暮らしのぬくもりを伝えている。
出雲市大津町のプロカメラマン、岩谷佑一郎さん(27)は「自由に撮る精神が素晴らしい」。岡山県総社市の会社員、大和成吉さん(48)も「物の見方が意外性に富み、しかも美しい」と感激していた。(山根行雄)