政府は、新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置を適用している31都道府県のうち18都道府県について21日まで約2週間延長すると決めた。
18都道府県の新規感染者数は減少傾向だが、減少速度が鈍り重症、死者数の高止まりが続く。多くの都府県で病床使用率がなお50%を超えて医療体制は厳しく、延長は妥当な判断だ。ただ政府は当初「第6波」は2月半ばにもピークアウトの可能性もあるとしていた。状況認識の甘さが対策徹底を妨げなかったか、きちんと総括すべきだ。
オミクロン株主流型より感染力が強いとされる派生型「BA・2」の拡大も気がかりだ。これが主流に置き換われば、感染者数が増加に転じかねない。今回の延長期間で何とか第6波を抑え込むためBA・2に最大限の警戒態勢を取るべきだ。
国内では、今年に入ってオミクロン株が爆発的に広がったため新型コロナ感染者は300万人以上増え、累計500万人を超えた。海外では、オミクロン株により急増した感染者数は減少も速いケースが多かったが、日本ではピーク後の下降線が明らかに緩やかだ。
これはなぜか。感染の主流が若者世代から子どもや重症化しやすい高齢者に移ったことが大きい。そのため感染者が想定より減りにくくなり、遅れて来た重症者、死者増加の波を防げなかった。「政治は結果責任だ」と認めた岸田文雄首相は目算が狂った原因を検証し今後に生かしてほしい。
日本で検出されたことが1月下旬に判明したBA・2は海外で先に広がり、デンマークで新規感染者の大半を占め、フィリピンでもオミクロン株の大部分がBA・2になった。BA・2は主流型より感染力が18%高く、感染後に他の人にうつるまでの「世代時間」が15%短いと専門家は見る。
東京では3月中に主流化し、4月初めには74%を占めるようになるとの試算もあり、防疫上重大な局面を迎えている。政府や自治体はBA・2拡大を何としても防ぐ一方、主流化してしまった場合の検査、医療の態勢強化に向けて万全の備えを整えてほしい。
第6波収束には、ワクチンと治療薬が大きな鍵を握っている。しかし、オミクロン株の感染予防に効果的なワクチン3回目接種の完了者は、65歳以上では50%を超えたが、全体ではまだ20%余りにとどまる。欧州などでは既に50%超の国もあり、この遅れも感染者減少を鈍らせた要因とされている。首相が打ち出した1日100万回の接種ペースを軌道に乗せるため、さらに取り組みを強めてほしい。
一方、2月に始まった5~11歳の子どもへのワクチン接種には注意が必要だ。痛い思いをさせ副反応も出るが、小児は感染した場合も軽症が多い。メリットとデメリットを保護者や本人に丁寧に説明し、安心して接種できるよう努めるべきだ。
政府は米メルク製と米ファイザー製の飲み薬を特例承認。塩野義製薬も国内開発した飲み薬を初めて承認申請した。飲み薬は、自宅や宿泊施設で療養する患者も服用できるが、供給量に限りがある上、主な目的は重症化防止だ。感染拡大が目に見えて止まる効果までの過大な期待は避けたい。
入学、就職など人の移動、交流が増える年度の変わり目には、感染再拡大の可能性が高まる。今が踏ん張りどころだ。