東日本大震災から11年が経過したばかりの深夜の被災地を、マグニチュード7を超す大きな地震が襲い、宮城、福島両県で震度6強を観測した。負傷者は多数に上り、亡くなる方もいた。心からお悔やみ、お見舞いを申し上げたい。
両県には津波注意報が一時発令され、実際に津波が観測された。広い範囲で建物やインフラなどが損傷。営業運転していた東北新幹線が脱線し、東北、関東地方で大規模な停電も発生した。
いずれも過去の地震で経験し、対策を練ってきた被害だ。国、自治体はまず全容の把握と復旧、被災者支援に全力を挙げてもらいたい。その上で積み重ねた防災対策の効果を検証、一層の強化に取り組むべきだ。
営業運転中の新幹線の脱線は、2004年の新潟県中越地震での上越新幹線以来、2例目のことだ。今回は東北新幹線の福島―白石蔵王間でやまびこ223号の17両中16両が脱線、乗客乗員78人が車内に閉じ込められたが、けがはなかった。
上越新幹線の脱線では、多くの教訓を得た。
当時の国土交通省の事故調査で、上越新幹線は時速200キロで走行中に脱線し、そのまま約1・6キロ走っていたことが判明。それでも転覆を免れ、乗客乗員154人に負傷者を出さずに済んだのは、脱線後に車輪と台車部分の間にレールが挟まった状態になったからだ。これは偶然によるものだった。
その後、JR東日本は車輪の外側に特殊な金具を取り付け、脱線しても大幅な逸脱を防ぐ方法を開発、すべての新幹線に設置した。JR各社も同様の取り組みをしている。
また上越新幹線の事故では、地震の初期微動を検知し、列車を自動停止させる「早期地震検知システム」の作動が間に合わなかったことも分かった。調査結果を受けJR各社は、地震計の増設やシステムの改良などに取り組んできた。
今回、やまびこ223号も転覆を免れており、今後の運輸安全委員会の調査では、脱線の詳細なメカニズムの解明と、安全対策の有効性などの検証を徹底してもらいたい。それが安全性の向上につながるはずだ。
一方、津波注意報は地震直後に宮城、福島県の沿岸部に発表され、約5時間後にすべて解除された。この間、宮城・石巻港で30センチ、仙台港や福島・相馬港で20センチの津波を観測した。
幸い被害を招くものではなかったが、東日本大震災では津波が惨状を生み出したことを忘れてはならない。
大震災で自宅を流されたという福島県相馬市の住民は「当時の記憶が瞬時によみがえり、揺れが収まったらすぐ、家族全員で高台に避難した」と証言している。
関係自治体は、津波情報の伝達や避難所の開設などに遺漏がなかったか、情報を受けた住民はどう行動したのかなどを検証し、今後に備えるべきだろう。
大震災で事故を起こした東京電力福島第1原発では、使用済み核燃料プールにつながるタンクの水位が低下したため、冷却を一時停止し、約7時間半後に再開した。
東電は「安全性に問題はない」としているが、原発の廃炉は数十年を要する作業である。その間、いかなる災害があっても安全を確保するという視点から、今回の事態を厳しくチェックしてもらいたい。