短歌 西基宜選

雪山を染め沈みゆく夕焼けを眩しみ見上げつ牛飼い終えて     安 来 小林 稔子

 【評】牛に夕餉(ゆうげ)を与えて見上げる先に、今しも雪山を赤く染め沈みゆく夕陽。牛の弾んで草食(は)む音と、入り日に眩(まぶ)しい夕景と、ほっと一息つかれる作者と、三つが一つに心ぬくもる一瞬です。

八千キロ遥か未知なるメカニズム噴火空振(くうしん)の津波が襲ふ      松 江 勝部 政子

 【評】南太平洋のサンゴ礁や火山島から成るトンガ王国。ここで起こった大噴火。空気の振動が誘った津波は、遠く8...