スポット展示で紹介する種痘証=松江市殿町、松江歴史館
スポット展示で紹介する種痘証=松江市殿町、松江歴史館
島根県内最古の種痘証
島根県内最古の種痘証
スポット展示で紹介する種痘証=松江市殿町、松江歴史館
島根県内最古の種痘証

 かつて世界中で猛威を振るった感染症「天然痘」が流行していた明治8(1875)年2月発行とされる種痘証(ワクチン接種証)が、松江市殿町の松江歴史館で5日から展示される。当時もワクチンは数回打たなければ十分な効果が期待できなかったとみられ、新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種が進む中、明治期に感染症と闘った人々の歴史を伝える。5月29日まで。 (片山大輔)

 同館によると、江戸時代後期の1840~50年ごろ、天然痘のワクチン接種の技術が海外から伝来。松江藩では、西洋医学を好んだ9代藩主の松平斉貴(なりたけ)が先導し、自分の娘など身内に接種して安全性を確かめた上で領民に推進したため、藩内は感染者が少なかったという。明治政府は明治3(70)年に国民に勧め、同7(74)年には種痘証を出すようになった。

 歴史館に展示される種痘証は縦13センチ、横9センチの和紙に住所、氏名、生年月日などが記され、雑賀町に住む生島力雄さんが11歳4カ月で2回目の接種を受けたことを証明する内容。2回目接種を示す「再度」の印や医師とみられる印もある。昨年12月に子孫が3、4回目の種痘証と合わせて寄贈した。

 ワクチンは最低でも3回は接種しなければならなかったと考えられ、生島さんの4回目の種痘証は、抗体がうまくつくれなかったことを表す「不善感」との表記があった。

 展示では同じ頃に集団接種が行われたことを示す種痘証を含めて約40点を紹介。同館の新庄正典主任学芸員は「感染症を克服した歴史を知ってほしい」と話した。天然痘は1980年には世界保健機関(WHO)が根絶を宣言した。

 開館時間は午前9時~午後5時で、休館日は毎週月曜日(5月2日は開館)。観覧料は高校生以上510円、小中学生250円。