松江市殿町の松江歴史館で、江戸時代の多彩な地図を紹介する企画展が開かれている。伊能忠敬が実測地図「大日本沿海輿地(よち)全図」(伊能図)を完成させた頃、松江藩が伊能の地図を上回る精緻さで作った領内の地図など約35点を飾る。10日まで。
松江藩では、足軽の初代神田助右衛門(生年不詳~1798年)に始まる神田家が3代にわたって測量事業を担った。初代助右衛門の「寸里道(すんりどう)地図」は縦約17センチ、横約129センチの折り本で、松江から江戸までの参勤交代の道のりを表す。行程に沿って目盛りが付され、距離が一目で分かるよう工夫されている。
2、3代目助右衛門が共同で手掛けた「出雲国十郡絵図」は、伊能図が完成する前年の1820年に出来上がった。沿岸部に重点を置いた伊能図と異なり、松江藩全域の地理情報をくまなく取り上げた。郡ごとに平地を色分けした上で村境を破線で区切り、山や川にも詳細に触れている。
江戸の名所や地形を俯瞰(ふかん)した構図から捉えた浮世絵「江戸名所之絵」や日本地図をデザインに取り入れた伊万里焼の皿も目を引く。
展示を担当した市松江城・史料調査課の木下誠主幹は「神田助右衛門のように身分は低くても精密な地図作りで活躍した人が松江にいたことを知ってほしい」と話した。
開館時間は午前9時~午後5時。観覧料は大人500円、小・中学生250円。
(佐貫公哉)