日本新聞博物館館長・尾高泉氏
日本新聞博物館館長・尾高泉氏

新型コロナと情報とわたしたち
正しい知識で身を守る

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西懇話会の定例会が13、14日、浜田、益田各市であった。日本新聞博物館館長の尾高泉氏(57)が「新型コロナと情報とわたしたち」と題して講演。新型コロナウイルス禍で表面化した、現代社会の情報分断について警鐘を鳴らした。要旨を紹介する。

 新型コロナの感染拡大をきっかけに、交流サイト(SNS)の普及によって情報分断が起きていることが明白となった。SNSを通じたワクチン接種に関する誤情報の拡散で接種控えが起きたことや、新聞離れ、テレビ離れが進む若い世代向けに行政が相次いでSNS発信を始めたことは記憶に新しい。

 ニュースを得る方法の調査で、無料のインターネットニュースやSNSと回答する割合が増えている。コロナ禍の巣ごもりで高齢者世代の利用も伸びた。情報があふれる現代では便利な半面、利用者の閲覧履歴を人工知能(AI)が学習し、知らないうちに見たい情報しか届かなくなる恐れがある。情報が偏ることで自分の考えを多数派だと誤認し、異なる考えの人を誹謗(ひぼう)中傷してしまう場合もある。SNSやスマートフォンの普及が速く、教育も追い付いていない。

 購読者の減少が続く新聞だが、新聞などの伝統的なメディアでのみ情報を得た層が、最も正しい知識を身に付けていたという研究がある。

 西日本豪雨で被害を受けた岡山県真備町では、ハザードマップは100%的中していたにもかかわらず、多くの命が失われた。正しい情報が人々に届かなかった。戦争でも災害でもコロナ禍でも確かな情報は身を守る。新聞を読めない子どもが増えているが、習慣づけて取り組めば小学生でも短い時間で内容を理解できるようになる。いま一度、正しい情報が届かない社会構造について考えてほしい。

(中村成美)