大人に代わって日常的に家族の世話をしている18歳未満の子ども「ヤングケアラー」のうち全国の公立校に通う小学6年生について、厚生労働省は初めて実態調査の結果を公表した。6・5%、約15人に1人が「世話をしている家族がいる」と回答。昨年4月に公表した中学2年生の約17人に1人、高校2年生の約24人に1人を上回った。
小学生ケアラーの半数以上がほぼ毎日、きょうだいの送り迎えや祖父母の見守りをはじめ食事の準備や洗濯、買い物といった世話をこなす。それに費やす時間は1日1~2時間未満が最も多く、平均で2・9時間。6時間以上も1割近くに上り、遅刻や早退、勉強の遅れなど学校生活にさまざまな影響が出ている。
しかし年齢的に自分や家族が置かれている状況をしっかり見定め、大変なときに誰かに悩みを打ち明けたり、助けを求めたりするのは難しい。低学年のころから家族の世話に追われ、それを当たり前だと思っている子も少なくないようだ。7割以上が自らの負担について、周囲の誰にも相談した経験がないという。
子どもが1人で悩みを抱え込み、孤立していくのは避けたい。日々接する教員やスクールソーシャルワーカーら専門職による目配りと声かけを徹底し、行政の社会福祉部門や民間団体の支援につなげるなど社会全体で支える仕組みづくりを着実に進める必要がある。
調査は全国の小学校から350校を抽出して今年1月、小学6年生約2万4500人を対象に実施した。学校を通じて調査票を配り、児童が自宅に持ち帰って記入する方法を取り、9700人余りから回答があった。
世話をしている相手は、きょうだいが71・0%で最も多く、大半が幼いことを理由に挙げた。次いで母親19・8%。世話の時間は1日1~2時間未満が27・4%で最多だが、6時間以上も9・8%いた。
学校生活への影響では、遅刻や早退を「たまにする」「よくする」が合わせて22・9%、「忘れ物が多い」も32・3%に上り、いずれも世話をする家族のいない子のほぼ倍だった。抱える悩みについては、23・6%が「学校の成績」、12・2%が「生活や勉強に必要なお金」と答えている。
ただ76・1%は誰かに相談した経験がないとしている。本人が自らの負担を自覚していないケースもある。また自覚していても、家庭内のことを知られたくない、家族以外に相談する相手が見つからないといった事情があるとみられている。
学校現場からは「家庭内に介入しづらい」「本人が話したがらない」などと、実態把握の難しさを嘆く声も聞かれる。
そんな中、いくつかの自治体が独自の支援を試みている。埼玉県は、どんな状態であればヤングケアラーなのか、小学生にも分かりやすく説明する冊子を作成。1月から困っていることを書き込むカードと一緒に小学校に配っている。群馬県高崎市は希望世帯にヘルパーを無料派遣する「SOSサービス事業」を近く始めることを決めた。
欧州を中心に先行例があり、子どもの代弁者として行政から独立して調査・勧告を行う第三者機関「子どもコミッショナー」を創設して活用することも考えられよう。子どもの権利と利益を守るために何ができるか、議論と模索を重ねたい。