旧松原家住宅の内部を見学する県立大の学生=大田市大森町
旧松原家住宅の内部を見学する県立大の学生=大田市大森町

 世界遺産登録15周年を迎える石見銀山遺跡の中核地域・大森町にある旧商家「松原家住宅」を図書館に整備する計画を、島根県立大(浜田市野原町)と義肢装具メーカーの中村ブレイス(大田市大森町)が進めている。図書館機能だけでなく、カフェや仕事、子どもが楽しめるスペースを設ける。学生や地域住民、観光客らが集う地域の交流拠点として10月のオープンを目指す。

 松原家住宅は575平方メートルの土地に木造2階建ての主屋と蔵(2棟)が建ち、国の重要伝統的建造物群保存地区にある。朝鮮銀行総裁を務めた松原純一の生家で、町並みが焼失した寛政の大火(1800年)直後に建築されたとみられる。

 地域貢献で古民家を買い取って改修し、社員寮や店舗に再生する中村ブレイスの中村俊郎会長(74)が約6年前に松原家の建物を取得。30年来の付き合いがあり、県立大副学長を務めた井上厚史さんが図書館整備を提案した。

 改修費は1億5千万円を見込み、同社が負担。計画は3年前に着手し、内部は明かりを極力抑え、洞窟をイメージした書庫で子どもたちに懐中電灯を持って絵本を探してもらうといった工夫を凝らす。「この人の推薦する本だったら読んでみたい」という著名人らをリストアップし、本をそろえる構想を描く。カフェのほか、縁側で腰掛けて読書するスペースも確保する。

 提案者だった副学長の井上さんは今月、亡くなった。27日は学生が視察に訪れ、中村会長は「少しでも魅力のある楽しいまちにするのが井上先生への恩返し」と語りかけた。

 井上ゼミ所属で総合政策学部3年の束元裕弥さん(20)は「住民や観光客、学生が連携し、交流できる場をつくりたい。井上先生のためにできることがあるとすれば、図書館を成功させること」と話した。
      (曽田元気)