ウォーターロボコンの仕組みを利用したシジミの養殖実験装置=出雲市湖陵町大池、制電工業
ウォーターロボコンの仕組みを利用したシジミの養殖実験装置=出雲市湖陵町大池、制電工業

 高圧受電設備・配電盤製造の制電工業(出雲市湖陵町大池)が、自社開発の排水浄化技術を応用したシジミの養殖実験に取り組んでいる。繁殖しやすい環境を生む装置として2、3年後の実用化を目指し、島根県産シジミの資源の安定化に役立てる考え。

 同社の排水浄化装置「ウォーターロボコン」は、水中で強い酸化力を持った分子を発生させる「高圧プラズマ放電」と、オゾン注入で水中の有機物質を分解させる。さらに木炭や沸石を使ってろ過し、水を浄化する。洗車などに使った排水を再利用する用途で、全国で約60基の納入実績がある。

 実験は同装置の仕組みを応用し、シジミの生殖に必要な微生物だけを残して水をきれいにし、酸素を増やして繁殖に適した環境を整える。

 昨年夏、50リットルの水槽にウォーターロボコンと同じ仕組みの装置を作り、県産シジミの飼育を開始。現在は1日2回、水中に15分間放電し、有機物の除去や水中内の酸素濃度を調整している。

 産卵はまだ確認できていないが、稚貝が大きくなるなど順調に育っていることから、近く150リットルの水槽2槽に装置を移して実験を本格化させる。

 島根県水産技術センターが2020年10月に行った調査によると、宍道湖に生息するヤマトシジミの推計資源量は約3万9千トン。調査を始めた1997年以降の資源量平均値(5万2千トン)の8割程度にとどまっている。

 原秋路社長は「シジミの資源を守り、地域の役に立てないかと考えた。実験段階だが、実用化は十分できそうだ」と話した。(平井優香)