浜田地震での隆起により独特の景観を織りなす石見畳ケ浦=浜田市国分町
浜田地震での隆起により独特の景観を織りなす石見畳ケ浦=浜田市国分町

 1872年に発生した浜田地震から今年は150年になる。大災害でありながら、石見地方を代表する景勝地の石見畳ケ浦(浜田市国分町)は、この時の隆起で誕生した。石見畳ケ浦資料館の桑田龍三館長(島根県地学会顧問)は地震と関連し、急激な隆起で生じる「ノッチ」「ポットホール」の二つの浸食地形を見どころに推す。気温が上がり、海岸の散策も楽しめる季節。石見畳ケ浦では海の美しさと自然のダイナミズムを体感できる。(西部本社報道部・板垣敏郎)
 

桑田龍三館長

 一帯は1600万年前に堆積した砂岩層で、浜田地震で海底が1メートル程度隆起して現れたとされる。縦横に規則的に走る亀裂が織りなす千畳敷、丸い椅子のようなノジュール(団塊)、地層が傾きながら隆起し小高い丘となった馬の背など各種地形とともに化石が豊富にあることでも知られる。

 桑田館長お勧めのノッチは海面付近の岩壁が波により横に長く、鋭く削られた地形。石見畳ケ浦には岩の奥がえぐられたノッチが、地上の至るところにある。
 

波に削られた跡が横一文字に走り、岸壁を上下に分断しているように見える石見畳ケ浦のノッチ

 ポットホールは海中の岩盤の弱い部分にたまったつぶてが周りを削り、徐々に大きくなった円形の穴。ノッチもポットホールも地上で見かける場合、ゆっくりではなく急激な隆起があったことを示すという。
 

石見畳ケ浦のあちこちにみられる丸い穴「ポットホール」(手前)

 浜田地震の隆起のすさまじさを今に示す二つの地形。特にノッチは今の海面から高さ約1メートルのところにあり、激しい揺れを物語る。桑田館長は150年の歳月を踏まえ「人間には戦争もあり変化が激しかった間、石見畳ケ浦は悠久の時を刻んだ。落差を楽しんでほしい」と来訪を呼びかけた。

 浜田地震は1872年3月に浜田沖日本海で発生し、死者550人超を出した。規模はマグニチュード7・1とされ記録が残る中で島根県内最大級の地震。石見畳ケ浦は国の天然記念物で今年は指定から90年になる。