浦富海岸でポーズを取るコスプレイヤー=鳥取県岩美町浦富
浦富海岸でポーズを取るコスプレイヤー=鳥取県岩美町浦富

 アニメ制作会社「京都アニメーション」の人気作品「Free!」のロケ参考地とされる鳥取県岩美町にファンが再び集い始めている。2019年7月に発生した放火殺人事件からまもなく3年になるが、ゴールデンウイーク期間中は県外からの来訪者が大幅に増えた。町民は交流の復活を喜び、今後のにぎわい継続を期待する。(報道部・中島諒、山本貴子)

 Free!は水泳に青春を燃やす高校、大学生のキャラクターを描いた人気作。13年にアニメシリーズの放送が始まって以来、現在までに劇場版計7作品を公開。4月に上映が始まった7作目はシリーズの最終章に当たる。

 ◇全国から注目◇

 岩美町は作品の放送開始以来、舞台の架空都市「岩鳶町」と景観が似ていると話題になり、ロケ参考地として全国から注目を集めた。女性を中心としたファンが、髪型や衣装をまねてキャラクターになりきるコスプレを楽しみながら浦富海岸や岩美駅などを巡るようになった。

 「GW中は久しぶりに(客数)が増えた」。館内に陳列されたファンから寄せられたグッズを懐かしむように眺めるのは民宿「ビーチインたけそう」(岩美町浦富)の武田智一社長(62)だ。女性ファン向けの特別宿泊プランをいち早く設けるなど、ファンの受け入れを積極的に進め「たけパパ」の愛称で親しまれている。

ファンから寄せられたグッズを眺める武田智一社長=鳥取県岩美町浦富、ビーチインたけそう

 「以前は毎月来てくれる子もいた」と振り返るように、顔見知りのファンとの交流を楽しんでいたが、20年春からの新型コロナ禍による緊急事態宣言を受けて予約キャンセルが相次ぐ厳しい状況が続いた。

 ◇連日満室に◇

 2022年は3年ぶりに県外への行動制限がなかったこともあり、一転して4月28~5月8日は連日、ほぼ満室状態が続く盛況だった。連休が終わり客足は再び減少しつつあるが、映画を見て足を運ぶ人もおり、少しずつ予約も入りつつある。「作品が終わった後も、またファンが戻ってきてくれるよう願っている」と前を向く。

 作品に関する観光案内やグッズを販売する町観光協会(岩美町浦富)でもGW期間中の盛況ぶりが現れている。GW中の売り上げは約85万円で前年同期比の5倍以上、来館者数も1964人で約2倍になった。

 ◇ファンのふるさと◇

 まだコロナの影響でイベント開催には制限が伴い、GW中の勢いを平時にどうつなぐかは課題になる。それでもアニメの放送が開始された13年から長く取り組んだ”聖地化”事業を通じ、学生だったファンが社会人に成長し、再び来訪してくれるなど結び付きの強さを感じている。

 町観光協会の西東靖二事務局長は「キャラクターの誕生日を祝うイベントなど、いろいろな催しを考えて引き続きファンを迎えたい」とプランを描く。

 ファンにとっても町は、ふるさとのような安らぎを感じる場になっている。5月末、キャラクターの衣装を来て浦富海岸を巡っていた京都府在住の30代コスプレイヤーの女性は、14年以来10回以上にわたり足を運び、今回は2年ぶりの来訪だったという。「作品は最終章を迎えたが、町の空気や潮を感じてキャラが生きてきたと思うと、町に来たらまた会えるような気がしている。これからも来たい」と笑顔で巡り歩きを楽しんでいた。