ともに宍道湖七珍の一つとされながら漁獲量の減少が続くアマサギ(ワカサギ)とシラウオについて、島根大学術研究院農生命科学系の高原輝彦准教授(45)が、新たな切り口で生態調査をしている。水に溶け込む魚介類のDNA情報から資源量を推定する「環境DNA」で、個体を捕獲せずに基礎データを収集。宍道湖内の生息域といった生態を把握し、保全活動につなげる。
農林水産省によると、県内でアマサギは1994年以降に漁獲量が激減し、現在は統計上「ゼロ状態」が続く。シラウオも98年に約174トンの漁獲を記録したのをピークに、近年は100トンを割り込む年が増加。資源量の回復を図るための生態調査は投網で個体を捕獲する手法が主流で、サンプルが少ないのがネックだった。
環境DNAは、高原准教授を含む研究グループが10年ほど前に確立した研究手法。調査地点の川や海から1リットル分採水し、ろ過した後に水中に溶け込んだ生物の排せつ物や脱落した組織のDNA情報を確認し、生息の有無や量を推定する。採水のみで済むため、個体が確認できなかった場所でもDNAの痕跡を基に水中の様子を探ることができる。
高原准教授は県水産技術センターと共同で2018年から、宍道湖流入河川の一つである平田船川(出雲市平田町)内の5地点で毎月採水したサンプルなどを分析。捕獲調査と比較すると、捕獲量の多い地点はDNAの検出量が多く、捕獲できなかった地点でもたびたびDNAが検出されたことから、生息域の可能性が高い場所があることを突き止めた。
今後は別の宍道湖流入河川も調べ、資源量の多い地点を絞り込むとともに、回遊魚であるアマサギ、シラウオの移動傾向などを分析。的を絞った保全活動につなげる。高原准教授は「漁獲量の復活には基礎データの積み重ねが重要。詳細な生息状況を導きたい」と話した。
(中島諒)













