復活させた木桶を紹介する森田郁史社長
復活させた木桶を紹介する森田郁史社長
木桶の組み直しに汗を流す職人たち=2018年10月
木桶の組み直しに汗を流す職人たち=2018年10月
復活させた木桶を紹介する森田郁史社長
木桶の組み直しに汗を流す職人たち=2018年10月

 奥出雲町三成の森田醤油(しょうゆ)店が、新潟のみそ製造所に眠っていた木桶(おけ)を解体して組み立て直し、しょうゆを仕込んだ。今や珍しくなった木桶を使っており、運搬時に必要な組み直しの技術を継承しようと専門家の手ほどきを受け、挑戦した。「地元産木材を使った桶も作りたい」と手応えをつかんでいる。

 古くからしょうゆ醸造で発酵・熟成過程に使われてきた木桶は、もろみの温度管理が難しく、洗浄や殺菌に手間がかかるため、多くは金属製タンクに取って代わられた。木桶は大きいため運ぶ際には解体、組み直しが必要だが、木桶が廃れるにつれ、組み直し技術を伝える人もわずかになった。

 木桶で仕込んだしょうゆは独特の豊かな風味が生まれ、うま味が凝縮されるため、同社は木桶を使い続けている。ただ、今では組み直しができる従業員がおらず、将来、組み直しが必要になるときに備え、技術を学ぶことにした。

 組み直した木桶は、直径2メートル、容量3600リットルと直径2・4メートル、容量5400リットルの2種類。昭和初期に作られたとされ新潟のみそ製造所に保管されていたものを、木桶修理の専門家団体「結い物で繋(つな)ぐ会」(大阪市)を通じて譲り受けた。2018年に解体して奥出雲に運び、繋ぐ会メンバーと一緒に、同社の従業員が組み直した。

 その後、仕込み、2年間熟成したしょうゆが今春でき、うま味と甘みのバランスが良い品に仕上がった。

 同社の森田郁史社長(62)は「自分たちの手で後世につなぐものを作ることができた。今後は奥出雲の木材を使った木桶作りにもチャレンジしたい」と意欲を高めた。

 しょうゆは360ミリリットル、864円。同社で扱っている。(清山遼太)