参院選が22日に公示され、鳥取・島根合区選挙区(改選数1)には、現職と新人4人の計5人が立候補した。それぞれの候補の政治を志したきっかけや、国や地域への思い、これまでの人生の歩みなど、横顔を紹介する。 (届け出順)

 

■黒瀬信明氏(N党、新)

<花園でプレー 人生の糧に>

 見る人だけが受信料を支払うNHKの「スクランブル放送」の実現-。NHK党の立花孝志党首の活動をユーチューブで知り「誰も取り組んでこなかったことに挑戦している」と感銘を受け、加わった。「問題解決のため、山陰から革命を起こす」と意気込む。

 学生時代にラグビーで培った粘り強さが武器だ。小学4年の時、兄の勧めで始め、大阪市の大工大高校(現・常翔学園高)3年時には花園でプレーし、全国3位に輝いた。最後まで諦めない姿勢を学べたことは「人生の糧になった」という。

 党の戦略で、前回選も出馬した鳥取・島根合区選挙区から立候補。島根県のあちこちで目にする「縁結び」の文字に、自身と山陰の結び付きを感じる。「党の活動には賛否があるが、少しずつ理解を広げていきたい」。東京都葛飾区。37歳。 (清山遼太)

 

■福住英行氏(共産、新)

<趣味の写真 SNSに投稿>

 子どもの頃、原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」を読み、衝撃を受けた。修学旅行で原爆が投下された広島県と長崎県を訪れ、多くの命が失われたと知った。「戦争をなくしたい」と心から思った。

 先輩に誘われて大学1年の時に共産党に入党。反戦の理念に共感した。核兵器廃絶を求める署名運動や原水爆禁止世界大会に参加して、一人一人が声を上げて運動を起こすことの大切さを学んだ。

 20代の頃、党の機関紙・赤旗の記者を担当したことがきっかけで、写真撮影が趣味。何げない日常の風景を撮っては、インスタグラムに投稿する。

 高校と大学で演劇に打ち込んだ経験は演説に生きる。「いい声ですね、とよく言われる。演説の中身よりも声を褒められることが多い」と笑う。米子市車尾4丁目。46歳。 (岸本久瑠人)

 

■村上泰二朗氏(立民、新)

<保育所迎え 寝かしつけも>

 政治家を志したのは中学生の頃だった。地域の役に立つためにできることを考えた時に、将来像が浮かんだ。鳥取県職員として11年務めたのも、地域のために働きたい一心だった。

 5歳と1歳の息子、教員の妻(35)と4人暮らし。家事を分担し、子どもたちを保育所に迎えに行き、寝かしつけまでする日もしばしばだ。寝顔を見るたびに「しっかりした未来を残すには、政治で社会構造を変えなければいけない」と決意。子育てしやすい環境づくりとの主張には自身の経験と実感がこもる。

 尊敬する人物は、平井伸治鳥取県知事。「おちゃめな部分がクローズアップされるが、広い視野で日本の中の鳥取県のあるべき姿を捉えている」と感じ、発想の豊かさや挑戦する姿勢を政治家として手本にしている。鳥取県日吉津村今吉。34歳。 (岸本久瑠人)

 

■前田敬孝氏(諸派、新)

<玄米菜食実践し体調改善>

 政治信条は「食は運命を左右する。国の運命も食が左右する」。このことに気付いたのは1990年代前半、フランスのパリで自動車ディーラーに勤務し、接待のため週3、4回は外食をしていた頃だ。栄養が偏り1年も続くと心身に不調を感じるようになり、医師から「食の見直しをしないと、どうなるか分からない」と告げられた。

 その後、玄米菜食の健康法「マクロビオティック」に出会い、体調が改善。食の重要性を痛感した。

 青年海外協力隊や高速道路建設でモロッコやアルジェリアなどを訪れ、海外経験が豊富。今年1月の鳥取県琴浦町議選では2期目を目指すも落選し「人生で一番落ち込んだ」。ただ「これは次へのステップ」と切り替え、食と健康を重点項目に掲げる「参政党」から国政に挑戦する。鳥取県琴浦町徳万。60歳。 (藤井俊行)

 

■青木一彦氏(自民、現、(推)公明)

<「和」の人間関係心がける>

 参院議員2期目に携わったのは、与野党間調整を担う国会対策委員会。法案成立を巡る審議日程など駆け引きの前線に立った。思惑や利害が絡む各党協議に必要なのは「流れを見る力」だと感じた。衆院にも人脈を築き「動き一つで流れがどう変わるか、勘で分かるようになった」と、自信をのぞかせる。

 遊説先で「災害はいつでもどこでもやってくる」と繰り返す。2019年9月の国土交通副大臣就任直後、関東地方を襲った台風の被害対策に当たり痛感した。「強い国土、県土をつくる」と誓う。

 兄貴分だった竹下亘氏(元衆院議員)が死去。島根県政界が過渡期に突入し「しっかり引き継いでいかないといけない」と自覚する。「最後はやはり人間関係」と先達に学んだ「和」の政治を心がける。出雲市大社町杵築北。61歳。 (白築昂)