地域活性化策や少子化対策を巡る参院選での論議は低調だ。対応を怠れば東京一極集中がさらに進み、東京と地方の格差は広がる。今後の急速な人口減少に備えるためにも、各党が独自策を出し合い争点化すべきだ。

 自民党は公約に「デジタル田園都市国家構想」を掲げ「〝全国どこでも便利な生活〟を実現」と訴える。岸田文雄首相(自民党総裁)の思い入れが強い目玉政策だ。

 思い起こせば、安倍政権は2014年に「地方創生」を打ち出し、年末の衆院選では公約の柱だった。選挙戦で盛んに連呼されたが、目標で掲げた「東京一極集中の是正」は進んでいない。

 急速な人口減少に対しても安倍政権は「国難」と称し闘っていることをアピールした。それでも21年の出生数は約81万と統計開始以来の最少を記録。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は1・30と6年連続で下がった。

 これらの数字が物語るのは、安倍・菅政権が進めた地方創生、少子化対策の成果は乏しいということだ。にもかかわらず自民党の公約には、デジタル田園都市の推進によって「地方創生の取り組みの深化」とある。反省の姿勢はない。

 まずは党として、地方創生の成果を評価し今後、解決すべき課題を示すべきであろう。それがないままでは、デジタル田園都市も地方創生と同様、選挙目当てとの批判を招きそうだ。野党側も地方創生の失敗を厳しく追及してほしい。

 また、田園都市の進め方には地方側から注文がある。高速通信規格である第5世代(5G)などの新しい移動通信システムの整備を「東京など大都市から始めれば、デジタル格差が広がり地方が取り残される」と平井伸治全国知事会長(鳥取県知事)は指摘する。

 地方自治体のデジタル化も東京の企業が中心になると、地域のIT企業が参画できる余地が少なくなる。地方のIT産業の衰退につながる恐れもあり注意が必要だ。

 与党の公明党も「デジタルで拓く豊かな地域社会」を柱の一つに据えた。人口減少は高齢化と同様に避けられないものとして対応策を示すものの、少子化対策への新しい提案は少ない。

 一方、野党の立憲民主党は、09年に民主党として政権を奪取した際には地方分権ではなく「地域主権」を前面に出した。その流れをくみ公約には「自治体の自主性・自律性を高め、活力ある地方をつくる」とあるが、具体性には欠ける。

 同じ野党の日本維新の会は「中央集権の限界を突破する統治機構改革、地方分権と地方の自立」を訴える。大阪生まれの政党であり、代表の松井一郎大阪市長は府と市の一体化を進めてきた。それだけに、地方に軸足を置いた改革を主張するのは当然と言える。

 ただ、首都・副首都法を制定し、大阪・関西を首都機能のバックアップを担う拠点とすることを公約に掲げるなど、大阪優先との声も出そうだ。

 知事会がまとめた「新たな日本の創生に向けた提言」に対する各党の意見のうち地方に関係する政策の賛否は、各党ともほぼ同じだ。知事や市町村長らを敵に回したくないという発想から、地方重視を装っていると疑いたくなる。横並びのままでは現状を改善できない。活発な議論を期待したい。