島根県で新型コロナウイルスの感染者数が初めて1日1千人を超えた。18歳以下の子どもの感染拡大が目立つ中、保健所の業務逼迫(ひっぱく)のため県方針として行われてきた濃厚接触者ではない人を含む「幅広なPCR検査」は縮小。多くの児童・生徒が検査を受けられず、陽性者らの行動確認も追い付かない、情報が細る状況で学校現場は休校するか否かの判断を迫られている。
(勝部浩文、井上雅子)
12日までの1週間で、松江市は約600人、出雲市では約1600人が感染。多いのが18歳以下の感染で、松江市教育委員会は12日、新たに小中学校8校の学年・学級閉鎖を発表。学年・学級閉鎖は同日現在、16校、計39学級になった。出雲市では12日、小中学校3校が新たに学級閉鎖となった。
爆発的とも言える感染拡大に伴い検査対象が増えた松江、出雲両保健所は業務が停滞し、既に「幅広なPCR検査」の対象を、医療機関、高齢者施設、障害者施設、保育所、幼稚園に限っている。
このため、多くの児童・生徒が検査を受けられない状況にある。さらに、学校内の感染把握や今後の予測につながる、保健所による陽性者らへの綿密なヒアリングも手が回っていない。
市教委の成相和広副教育長は「保健所と十分なやりとりができない状況」とする。休校する場合、解除する場合のいずれの判断も、学校現場の聞き取りの範囲内で行わざるを得なくなっているという。
感染の急拡大で逼迫する状況は、疑いのある患者を最初に受け入れる診療所も同じだ。発熱の外来患者が、6月は1日1、2人だった後藤内科医院(出雲市塩冶町)では7月に入り、毎日20人に。11日は20人中10人が陽性だった。
発熱患者の検査・診察を自家用車のドア越しに行う駐車場と、医院の間を、感染防止用のガウンやフェースシールドを着た医師や看護師が猛暑の中、一日何十回も往復する。今のところ一般診療には大きな影響はないものの、後藤才示院長(77)は「過酷で体力を消耗しながら診察に当たっている」とあえぐ。
小竹原医院(松江市大輪町)では発熱を訴える患者数や新型コロナの陽性者数が1週間前と比べ2倍に。うち3割が小中学生。小竹原良雄院長(72)は「これ以上感染が広がらないよう皆が対策を徹底し、辛抱するしかない」と願うように話した。