接ぎ木を用いた植物のバイオマス増加技術を開発した門田宏太さん=松江市西川津町、島根大
接ぎ木を用いた植物のバイオマス増加技術を開発した門田宏太さん=松江市西川津町、島根大

 島根大大学院自然科学研究科2年の門田宏太さん(24)を中心とした研究チームが、栄養吸収能力を高めた根と別の植物をつなぐ「接ぎ木技術」を用いることで、養分が乏しい環境で植物を大きく成長させられるバイオマス増加技術を開発した。理論上は多くの植物で応用が可能で、条件の悪い土地での育成に生かせる可能性がある。(中島諒)

 昨年4月に研究を始めた門田さんは、植物が窒素やリンといった成長に必要な栄養塩を取り込む際に機能する輸送体「細胞膜プロトンポンプ」に注目。この機能を薬剤で活性化させることで、植物の栄養吸収能力を高められると考えた。

 ただ、この方法で活性化させた株は葉の気孔が開き乾燥に弱いという課題があった。そこで門田さんは、活性化させた株の根だけを切り取り、別の株の葉とつなぎ合わせる接ぎ木で課題を解消しようと試みた。

 門田さんは、シロイヌナズナの葉と活性化させた株の根をつなぎ合わせる作業を一年余り試行。無菌状態を維持しながら、ピンセットで1センチ未満の葉と根に少しずつ手を入れる繊細な作業を100回以上繰り返した。

 このうち、接ぎ木に成功した株は通常株に比べ、貧栄養環境下で栽培した際も窒素、リンなど11種類の栄養元素の含量が23~65%と大幅に増加することが判明。葉のサイズも29%大きく、栄養塩の取り込み能力が著しく向上したことが示された。

 機能を活性化させた株を作るには植物の遺伝子情報の解読や、葉と根を接ぎ木する技能を要するため、他の植物への応用が今後の課題になる。

 指導に当たった、島根大総合科学研究支援センターの蜂谷卓士助教は「アイデアを実現するための接ぎ木の高い技能と情熱が見事だ」と評価。門田さんは「作物にも応用して食料問題の解消や肥料の削減につなげたい」と意気込んだ。