琉球ゴールデンキングスとの準決勝2試合で、61得点、19リバウンドをマークしたペリン・ビュフォード(左から2人目)=沖縄県沖縄市、沖縄アリーナ
琉球ゴールデンキングスとの準決勝2試合で、61得点、19リバウンドをマークしたペリン・ビュフォード(左から2人目)=沖縄県沖縄市、沖縄アリーナ

 週末にバスケットバール男子Bリーグ1部(B1)島根スサノオマジックの試合がなく、寂しく思っている人も多いのではないか。来期のシーズンインは10月から。新戦力を補強した「新生スサノオマジック」の戦いが楽しみだ。9月からはプレシーズンマッチが始まる。島根県がバスケット強国だった時代に育ち、大学(国内トップの関東リーグ1部)までプレーした視点から、スサノオマジックの強さの秘密と新シーズンの注目ポイントを挙げてみた。

 まず、ファンにとってシーズンが終わり、一番の心配は主力選手が流出するのではないかという点だった。初出場したチャンピオンシップでアルバルク東京を破り、ベスト4に進出。準決勝では西地区1位の琉球と相手ホームで激闘を演じ、あと一歩のところまで追い込むなど「島根強い」と全国のバスケットファンに強烈な印象を与えた。

琉球ゴールデンキングスとの準決勝2試合で、61得点、19リバウンドをマークしたペリン・ビュフォード(左から2人目)=沖縄県沖縄市、沖縄アリーナ

 スサマジ主力の外国人選手3人は、いずれも攻撃力があり、走れて、守れて、リバウンドも強いと何拍子もそろっている。どのチームにとってもほしい選手で、オフには各チームからオファーがあったと思う。

【チャンピオンシップ準々決勝第2戦・島根-A東京】第1クオーター、島根のリード・トラビス(左)がシュートを放つ=松江市総合体育館

 よく島根で継続してプレーすることを選んでくれたなと思う。チーム側の努力がもちろんあったと思うが、外国人選手にとっても島根でプレーを続けることで、さらに上を目指せて、自分の選手としての価値を高めることができると思い、残留を決断したはず。それだけに来シーズンにかける気持ちは強いはず。その上を目指すという気持ちが、ファンとしてはうれしい。主力メンバーがそのまま残り、チームの仕上がりは早いはず。開幕からスタートダッシュを決めたいところだ。

【チャンピオンシップ準決勝第2戦・島根-琉球】第3クオーター、島根のニック・ケイ(右)が攻め込む=沖縄県沖縄市、沖縄アリーナ

▼主力メンバーが残った有利さ

 主力メンバーが残るメリットは、バスケットでは特に大きい。バスケットはハビットゲームと言われ、走りながら、動きながら、多くのプレーが行われるので、練習の中で習慣化された動きというのが勝負を分ける。また、オフェンスの攻撃パターンやディフェンスの動きなど、たくさんの決めごと、ルールがある。

 スポーツはスピードとパワーが見せ場だが、単純に筋力が強い、背が高いだけで、決まらない、技術や頭を使ったプレーがあるところが、バスケットの魅力だ。また、一緒にプレーしていると、仲間の選手の癖が分かり、パスや動き出しのタイミングがつかめるので、動きが重なったりせず、うまくタイミングを合わせることができる。

 何より一緒に厳しいシーズンを戦ってきた信頼感があり、このきずながチームワークを生み、5人の力が7にも8にもなるのが、バスケットの面白さだ。島根でのプレーを選んだ外国人選手はもちろん、こうしたことは分かっている。昨シーズンの厳しい戦いを経験して得た自信とチームメートへの信頼は、チームの大きな財産だ。主力の外国人選手が島根で継続してプレーすることを選んだということは、チームの雰囲気が悪くない、いやむしろとても良いということを証明している。ファンとしてはうれしい限りだ。

▼バズソーはなぜ強い?

 主力選手の残留は、いいことが多いが、もちろん不安な面もある。同じメンバーでチームのスタイルが変わらないということは、相手チームにとっては研究がしやすい、対策をとりやすいということ。スサマジのポール・ヘナレ監督が掲げるバズソースタイルは、厳しい守備からリバウンドを奪ったり、相手のパスミスを誘ってボール奪ったりして、すぐに速い攻撃を展開し、相手のディフェンス5人が帰る前に攻めきってしまうという戦術。昨シーズン、相手チームにとってはスサマジのスタイルは衝撃だったと思う。

 実際、スサマジは土日の連戦の初戦は強い。相手チームにとってはビデオやデータ分析で頭では理解していても実際に対戦して身体で経験しないと対応できない面がある。土日連戦の初戦では、相手チームがスサマジの速さに対応できず、第1クォーターや第2クォーターからリードを奪い、有利に戦いを進めたケースが多かった。ただ、昨シーズンの対戦で、多くのチームがスサマジというチームを身体で経験した。新シーズンはしっかり研究されてくるはず。ここをどう突破するかだ。

▼ジョーダンの戦術

 バズソースタイルがなぜいいのか。スサマジがなぜ強いのか、という点はバスケット経験者でないとちょっと分かりにくい部分がある。サッカーもそうだが、バスケットの戦術は時代とともに変化している。誰もが知っているバスケット選手といえば、アメリカプロバスケットボールNBAのスターだったマイケル・ジョーダンだ。ジョーダンの所属したチーム、シカゴブルズはNBAで3連覇するが、この時、オフェンスのスタイルは「トライアングルオフェンス」と言って、選手が三角形を保ちながら、攻撃のチャンスを作っていくという戦術だった。走れて、3点シュートが入り、ドライブインもうまい、ジョーダンの能力を最大限に引き出す戦術で、その後、この戦術はバスケットの基本戦術の一つになった。

島根スサノオマジックがチャンピオンシップ準決勝進出を決め、沸き上がる観客=松江市学園南1丁目、市総合体育館

 バズソースタイルは、ジョーダン時代より速く攻撃を仕掛けるのが特徴。ディフェンスからオフェンスへ素早く切り替えて、攻撃力のあるフォワードやセンターの選手が、バスケットコートの外側の左右を走る。ボールを保持した選手は、走り込んだ選手にパスを出すか、ドリブルでコートの真ん中を進み、パスを出すタイミングを図る。フォワードやセンターの走り出すタイミングが遅れて左右どちらかのコースを走れない場合は、ボール保持者のすぐ後ろを走り込んでくることもある。相手ディフェンスが帰る前に攻めきってしまうというスタイルだ。

 ジョーダン時代より、もっと速いタイミングでトライアングルを作り、ボール保持者は、2つ以上のパスを出せるコースがあり、自らドリブルで切り込んでいくこともできる。シュートも含めればボール保持者には4つの選択が用意される。選択の幅が広がり、より有利な選択をすることで、余裕のあるシュートにつながり、成功する可能性が高くなる。

 サッカーも戦術的に、相手が10人や11人で守ってしまうと、なかなか攻撃のチャンスがつくれない。それなら、ボールを速く前に出し、選手が走り込んで、3人や4人で、攻撃してしまうという、カウンタースタイルは各チームが目指す戦術になった。この点はバスケットも同じだ。

▼走りながら守る難しさ

 バスケットでは走りながらディフェンスをするというのは、たいへん難しい。Bリーグの外国人選手は、NBAでプレーするほどではなく、ヨーロッパなど外国のリーグでプレーし、ある程度、年齢が過ぎ、日本チームのオファーに応えた選手が多い。つまり、言い方は悪いが、身長とパワー、シュート力はあるが、年取っていたり、けがしていたりして、走りは苦手だ。

 スサマジの外国人選手は、日本国籍取得のウィリアムス・ニカ選手も含めて、4人とも若く、すごく走れる。特に外国籍の3人は走れて、ドライブ、シュートがうまい。ウィリアムス選手もディフェンスリバウンドを必死に争いながら、自らのチームが速い攻撃に転じると、必死になって走り攻撃に参加する。その真面目でひたむきなプレーは好感が持てる。
 

【第55戦・島根-京都】第1クオーター、島根のウィリアムス・ニカ(左)がゴール下に攻め込む=京都市体育館

 余談だが、ウィリアムス選手は松江市内の日帰り温泉によくかわいらしい3歳くらいの子どもさんとやってくる。「いつも試合見てるよ、ナイスプレーだ」と、英語で話しかけると、「ありがとうございます」と、丁寧な日本語で答えてくれた。子どもさんの髪を洗ってあげたりして、とても仲の良い親子で、微笑ましかった。ウィリアムス選手は昨シーズン、ゴール下のシュートを含めプレーが上達した。バスケット選手として、まだまだ成長する要素があり、日本代表候補にも選ばれた。新シーズンも楽しみだ。

▼スサマジはストロングスタイル!

 スサマジのバズソースタイルは、相手チームにとっては、分かっていても、走りについていけない。1人や2人なら、オフェンスからディフェンスに戻れるが、3人、4人となると、外国籍の大型選手や日本人選手でも身長の高い選手が、必死に走って帰り、ディフェンスしなくてはいけない。これができるチームは、チャンピオンシップに進出した8チームでぎりぎり。4強に進出したチームでも、なかなかできない。スサマジの厳しいディフェンスと速い攻撃は、バスケットのストロングスタイル。この戦術が昨シーズンは徹底されていた。後半の勝負どころの第3クォーター終盤や第4クォーターでは、相手チームも疲れてきているので、走る攻撃は特に有効だ。ヘッドコーチの戦術をしっかり理解し、ゲームを通して全員がプレーの約束事を守り抜くというのは、なかなかできない。これができることがスサマジの強さだ。各選手の能力と戦術がうまくかみ合い、各選手がチームとして戦うために、自分の役割を忠実に果たす。チームの総合力がたいへん高く、優勝が狙えるチームになった。

 では、今シーズンはどう戦うのか。昨シーズンのチームの総合力にプラスアルファが必要になることは間違いない。オフェンスやディフェンスの具体的な戦術面や新戦力の効果については、次回、お届けする。 
 (編集局ニュースセンター 舟越 幹洋)