出雲市で懸案の空き家対策が少しずつ進み始めた。市が運営していた「いずも空き家バンク」を6月、NPO法人出雲市空き家相談センターに委託し、空き家所有者向けの情報発信や相談会の開催、売買に向けた支援が展開されるようになった。空き家は中心市街地に多く、区画や面する道路が狭く、権利関係が複雑など全国的に対策が難しい。家屋の老朽化と相続人の高齢化も課題で出雲市の取り組みは注目される。(出雲総局報道部・月森かな子)
出雲市には2021年4月時点で2652軒の空き家がある。市によると、うち約430軒が老朽度などから不動産業者に敬遠されがちで、売却や賃貸といった流通に乗りづらいため対応が難しいという。
市はNPO法人出雲市空き家相談センターに相談や発生予防のための周知啓発、物件情報を集めた「いずも空き家バンク」の運営、登録支援を委託した。NPOは司法書士や行政書士、宅地建物取引士、市内の不動産業者が加盟する出雲宅建センター、解体業者など資格や関連知識を持った専門家や団体が会員。さまざまな視点で助言することができ、課題の解決につながる。
NPOでは月1回定例会を開き、空き家バンクの登録支援物件や相談の情報を共有する。会員がそれぞれの立場で活用法を提案する。6月以降、空き家バンクの登録支援から売却までこぎ着けた事例が2件あり、ほかにも相談から売却や空き家の撤去につなげた事例もあるという。
9月には市内で空き家相談会を開き、不動産の相続準備や実家の片付け、整理などの案件も受け付ける。物件の利活用に加え、空き家にしない対策の周知を図る。地域ごとの勉強会も開き、住民同士で相談、解決ができる態勢づくりを目指す。
NPOの本常徹事務局長は「空き家になった物件の対処だけでなく、空き家を増やさない予防や啓発も大切。住民の関心を高め、各地域で対策活動を活性化させたい」と話した。
相談会などの問い合わせは同NPO、電話080(2936)7559。