「チョウや花といったモチーフの原点は、子どものころの原風景にある」。死去したファッションデザイナーの森英恵さんは2015年、島根県芸術文化センター・グラントワ(益田市有明町)で開かれた企画展を前に語った。原風景は山あいの故郷・吉賀町六日市。活躍した仏・パリ、米・ニューヨークの都会的情景とは対極にあるが、美意識の根源であり続けた。
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生家跡は六日市中心部にあり、今は花木が植わるフラワーガーデンとなっている。森さんの厚意を受け約20年前、吉賀町商工会などが整備した。管理に携わった六日市婦人会の福原妙子元会長(90)は、十数年前に帰郷した森さんを思い出し「懐かしそうにほほ笑み『きれいにしてくれてありがとう』と声を掛けられた」としのんだ。
六日市は標高310メートルの山口県境付近にある盆地。生家跡の近くを清流・高津川が流れる。娯楽に乏しい昭和の中ほどまで子どもは夏に高津川で泳ぎ、秋は栗やアケビなど山の幸を楽しんだという。
問題は冬。「雪や木枯らしが少ない今と、森さんがいたころと違うはず」と、生家跡近くでスナックを営む吉村新一さん(80)が話す。かつての冬は厳しく、よく雪が子どもの胸ぐらいの高さに積もり、雪かきや雪下ろしに追われた。10月に出したこたつや火鉢は、翌年の梅雨ごろまで使った。
つらい冬が終わり春が来る。少女時代の森さんが六日市で見て後にトレードマークとなったチョウと花は、喜びと幸福をもたらす使者のように映ったのだろう。
(板垣敏郎)













