堀尾吉晴が築いた松江城=松江市殿町
堀尾吉晴が築いた松江城=松江市殿町

 松江市が、市内の文化財に「ヒストリー」と銘打つ物語を加えて訴求力を強める。例えば、知名度の高い国宝・松江城天守と関連づけて多くの文化財に光を当てる。松江開府の祖の「堀尾吉晴とまちづくり」、島根県内最大規模の山代二子塚古墳といった「古代出雲の王墓」など八つほどのヒストリーを想定しており、12月の文化庁長官認定を目指す市文化財保存活用地域計画に盛り込む予定。

 市歴史まちづくり部によると、市内には古代から近世の文化財が豊富にある。個別の研究成果をヒストリーでつなげてさまざまな文化財に光を当てるほか、文化財の価値を分かりやすく発信する。

 吉晴とまちづくりに関するヒストリーは、松江城と城下町の文化財を柱にしつつ市外、県外にも幅を広げ、吉晴が造営を支援した出雲大社(出雲市)や、吉晴の出身地・愛知県大口町の文化財も絡めて、共同研究を進めながら情報発信する想定。古代出雲の王墓のヒストリーでは、山代二子塚古墳をはじめ市内に数多い古墳をつなぐ。古墳の変遷をたどり、埋葬された首長の姿を浮かべられるよう調査・発信を進める。

 文化財保存活用地域計画に関する有識者の協議会が21日あり、ヒストリーについては「地元住民に共有されていることが鍵になる」(津村宏臣同志社大准教授)と市民を巻き込み、地元で機運を高めるよう説く意見があった。

 文化財保存活用地域計画は2019年の文化財保護法改正で規定された法定計画。県内では益田市が20年7月に認定を受けた。(佐貫公哉)