【隠岐の島】実母と義母を同時に介護したのをきっかけに貼り絵を始め、月刊誌「こどものとも」(福音館書店)に採用された絵本作家安部明子さん(70)=隠岐の島町那久=の原画展が町図書館で開かれている。原作は夫才朗(としろう)さん(74)のヤギをもらいにいった体験談。緻密な色使いで昭和の隠岐が再現され、見る人に郷愁の思いを抱かせる。9月17日まで。
明子さんは徳島県吉野川市出身。千葉県内で夫婦で会社経営をする傍ら、才朗さんの母を介護した。
40代で自身の母も病気になり呼び寄せた。2人の母は認知症になり、明子さんはリハビリのため、一緒に年賀状に和紙を貼り付けて景色を描いた。
2003年、東京・上野の森美術館の展示に作品を応募すると入選。05年に那久へ引っ越し、08年には古里の吉野川を舞台にした「かわからのおくりもの」が、「こどものとも年中向き」に採用された。
2作目は才朗さんが子どものころ、実家から山をいくつも越えて叔母の家に着き、ヤギを連れ帰った思い出を明子さんが貼り絵にした。「ぼくのやぎ」と題し同誌11年7月号に採用された。
町図書館では原画を中心に30点を展示する。明子さんは「絵本出版が難しいと思われがち。若い人に絵が好きだったら出してみればと伝えたい」と話している。月曜休館で入場無料。
(鎌田剛)