8月29日は「焼き肉の日」。8(や)き29(にく)の語呂合わせで、全国焼肉協会(東京都中央区)が制定した。暑い夏で食欲が落ちる時だけに、焼き肉をおいしく食べるためのこつや楽しみ方を専門店で聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)
▷自宅でもおいしい焼き肉を食べたい!
まず気になるのが肉の選び方や焼き加減。お肉コーナーにはさまざまな種類の肉が並び、何を選んでいいのか分からない人も多いのではないか。せっかく焼き肉を食べるなら、好みに応じて肉を選び、最適な焼き加減でおいしく仕上げたい。

松江市朝日町の焼き肉店「れんげ」の店主、福島康洋さん(55)は「脂身が好きな人にはやはりカルビがお薦め。淡泊な肉を食べたい場合はロースやハラミがいい」と教えてくれた。ロースは肩に近い方から肩ロース、リブロース、サーロインと分かれ、肩に近い方が脂が多い。肩ロースはすき焼きなどに使われることが多く、焼き肉に適しているのはリブロースやサーロインという。
福島さんは「自宅で焼き肉をする時は、余分な脂を落とすとおいしく食べられる」とポイントをアドバイスした。余分な脂が付いたままの肉を食べると、胸焼けを起こしたり、気分が悪くなったりすることがあるという。言われてみれば、そんな経験をしたことがある人もいるのではないか。なるほど、脂には気をつけた方がいいみたいだ。
焼き肉店では専用の網の上で肉を焼き、余分な脂が下に落ちるようになっている。家で焼き肉を食べる時は、ホットプレートやフライパンを使う人が多いだろう。近年はプレートに穴が空いていたり傾斜が付いていたりと、下に脂が落ちる仕組みのホットプレートも多く販売されている。用意できる場合は使うと良さそう。焼き肉用のホットプレートを持っていない場合は、焼いた肉をペーパーナプキンの上に置いて余分な脂を吸い取ると、おいしく食べられるという。

焼き加減で注意が必要なのが、ミノやセンマイといったホルモン類。内臓というと良く焼いた方がいいのでは、と思われがちだが、ホルモン類は焼きすぎると固くなってしまうという。福島さんは「牛の内臓であれば(火の通り具合に)神経質になりすぎなくてもいい。押した時に弾力があれば食べ頃」と目安を教えてくれた。また、タンは脂分が多いため、しっかり焼いても固くなりにくいという。焼き肉でホルモンは人気だが、焼き加減で失敗して、黒い塊になってしまったこともあるのではないか。焼き過ぎない、を心がけたい。
▷「もみだれ」で専門店の味を再現
焼き肉に欠かせないのが、たれ。家で焼き肉をする時は市販のたれに肉をつける場合が多いが、専門店の味と比べるとやはり物足りなさを感じる人もいるだろう。福島さんによると、多くの焼き肉店では「もみだれ」と呼ばれるたれを、焼く前の肉にもみこんで下味を付けているという。
自宅で用意する場合はしょうゆ、みりん、砂糖、ごま油、うま味調味料を混ぜるとおいしいたれができる。ピリ辛風味が好きな人は唐辛子を加えると良い。完成したもみだれをボウルに入れて、焼く前の肉にもみこむと下味がつき、専門店の焼き肉の味にグッと近づく。

脂分が多いタンはレモン汁を付けてさっぱりと食べるのが一般的だが、福島さんは「ニンニクやしょうがも合う」と教えてくれた。店では客の要望に合わせて、ニンニクをタンにすり込んでから焼いたり、おろししょうがや刻んだネギ、千切りニンニクを合わせたりすることもあるという。
福島さんは「個人的に好きな部位は、もも肉」だと言う。もも肉というとカレーやシチューなどに使われることが多く、焼き肉に登場するイメージは薄いが「肉を食べているという感じがして満足感がある」とのこと。サイコロ状にカットしたものをフライパンで焼くとおいしいという。
▷話題のジビエ、焼き肉でも
低カロリー、高タンパクで近年、人気を集め、鳥獣被害対策としても注目されているイノシシ肉。冬の時期を中心にジビエをメニューに加えている焼き肉店で話を聞いた。

創業40年近い「焼肉どんどん」(松江市西津田7丁目)は、11月から2月までの間、臭みが少なく食べやすいジビエを用意できる日に限り、焼き肉用に提供している。店主の金村日星(しげる)さん(67)が狩猟免許を持っていて、安来市や出雲市でイノシシを捕獲している。
夏に捕獲されるイノシシは冬と比べて痩せていて脂が少なく、食べた時に癖のある味や独特の臭いを感じやすいという。イノシシ肉は臭みがあり食べにくいイメージを持つ人もいるが、島根県の制度で狩猟期間に定められている11月から2月はイノシシ肉の旬の時期で、臭みが少なく脂がのった肉を提供しやすいという。
どんどんではジビエだけでなく、魚介類の刺身も提供する。今の時期は白イカを刺身や焼いた状態で出すことがある。白イカのほかにも旬の魚を刺身で出すこともある。その日に釣った新鮮な魚を使うため「歯ごたえが違う」と客に好評という。
牛肉や豚肉がメインの焼き肉だけでなく、イノシシ肉や旬の魚といった地元ならではの食材を提供するお店があるというのは、地方の食の豊かさだと思った。
▷屋外で食べるのも楽しい!
食肉加工、販売のほかバーベキュー関連のサービスを提供する宮本食肉店(松江市浜乃木2丁目)の藤井浩太郎専務(42)は、屋外での焼き肉の楽しさを提案する。

キャンプ場やビーチ、自宅の庭などで焼き肉を楽しむバーベキュー。夏から秋にかけては特に、仲間とにぎやかにバーベキューを楽しむ人が多いだろう。
バーベキューの開催が決まったものの、食材を調達する時、1人前がどのくらいなのか、どんな肉を準備すれば良いのか、肉以外はどんな食材を準備すれば良いのかなど、悩む人は多いだろう。宮本食肉店は誰もが手軽にバーベキューを楽しめるようにと、食材の用意、器具の貸し出し、設置、片付けを担うサービスを提供している。
用意している食材は肉にとどまらず、海鮮や野菜、ソフトドリンクやビールサーバー、シメの焼きそば、カレーライスといったものまで、要望に合わせて幅広く準備するという。食べ物だけでなく飲み物や皿、箸、机、手持ち花火など遊び道具も用意できるとのことで驚いた。全部お任せで、楽しくバーベキューができる。

藤井専務は「急にバーベキューの幹事を任されても、なかなか勝手が分からないと思う。なるべく要望に合わせて準備するので、ぜひ利用してほしい」とし「屋外で食べるとそれだけでおいしく感じる」とバーベキューならではの魅力を話した。
片付けもサービスの一環になっているため、使った後の道具やごみはそのまま置いて帰ることができる。用具のそばに専用の注意書きの紙を置いてもらい、後で業者が片付けに来ることを周りの人にも分かってもらえる仕組みだ。
バーベキューの食材、用具の予約はホームページ内の専用フォーム、ライン、電話0852(22)1928で受け付ける。
この夏は猛暑が続き、食欲が落ちた人も多いと思う。焼き肉は肉を焼けば良く、簡単な料理だと思っていたが、専門店にはいろいろな工夫がされている。アドバイスを受けた肉の選び方や焼き方に注意し、旬の魚も加えたりして、家族や友人と焼き肉を楽しんで、9月を元気に迎えたい。