生徒数の減少により2012年度末で閉校した浜田高校今市分校(浜田市旭町丸原)の校舎が解体されるのを前に、約50年前の卒業生と教員が31日、現地で集い、思い出の詰まった学びやとの別れを惜しんだ。 (青山和佳乃)
今市分校は1954年に矢上高の分校として、農業科と家庭科でスタート。県立学校再編に伴い60年に浜田高の分校となり全日制普通科が設置され、99年には高校生が分校の在り方などを話し合う「全国高校分校サミット」も開かれた。2012年度末までに約1960人が巣立った。
閉校後も木造2階建て1棟、平屋2棟の校舎が残っていたが、9、10月に解体され、23年10月には放課後児童クラブが建設される予定。懐かしい校舎を目に焼き付けようと、浜田高今市分校10期生の服部やよ生さん(70)=浜田市旭町今市=が呼びかけ、同級生5人と教員2人が集まり、思い出話に花を咲かせた。
盛り上がったのが学校の方針で中止されていた修学旅行の思い出。「何としてでも行きたい」と机で出入り口をふさいで教室に立てこもり、職員会議の結果、九州旅行が実現した。
井川治郎さん(71)=同市金城町下来原=は「いい思い出ばかり」と振り返った。当時はやったグループサウンズに憧れ、アルバイト代をためてギターを購入。教室で演奏すると、クラスメートが歌ってくれた。「好きなことに夢中で、何も考えない青春時代だった」と目を細めた。
10期生の入学時に、新米教員として着任した山崎陽子さん(76)=同市天満町=は「あの頃のみんなの顔が浮かんでくるようだ」と懐かしんだ。
服部さんは校舎に別れを告げながら「同級生との絆をさらに強める機会になった」と感謝を伝えた。