閉塞(へいそく)感、という言葉によって日本の社会が語られるようになって久しい。その一方で、物事の変化のスピード自体はおそろしく早くなり、思考も感情も追いつけないまま、引きずられるようにして生きている。

 そうした現状にくさびを打ち込んでくれる言葉は、やはり文学のなかにあるのではないか。

▼思考停止の果て

 金子薫の「道化むさぼる揚羽の夢の」(「新潮...