知夫里島遊覧の「べんてん丸」船上で赤壁の成り立ちをガイドするゴメス・ダヴィッドさん=島根県知夫村
知夫里島遊覧の「べんてん丸」船上で赤壁の成り立ちをガイドするゴメス・ダヴィッドさん=島根県知夫村

 一人で4カ国語に対応できる観光ガイドが知夫村の遊覧船で乗務を始めた。乗り込むのは知夫里島観光協会で勤務するフランス出身のゴメス・ダヴィッドさん(33)。村の玄関口となる来居港発着の遊覧船は新型コロナウイルス禍で約2年の休業を余儀なくされ、8月にようやく運航を再開。ゴメスさんは「海から見る赤壁は絶景だ」と強調し、コロナ後のインバウンド来訪を見据えている。 (鎌田剛)

 来居港から約50分をかけて島を一周する「べんてん丸」(6・3トン)のガイドとして、日本語のほかフランス語、英語、ポルトガル語を操り案内する。

 ゴメスさんは、島前カルデラや知夫里島の成り立ちを文献や住民から取材。集めた知識を基に見どころをまとめた冊子を乗船客に渡し、「赤壁に来ると大地に食べられそうな感覚になる」といった独特の表現で島の魅力を解説する。

 ゴメスさんは料理人になろうと、2015年に来日。広島のホテルなどで勤務し、日本人と結婚した。妻の祖母が知夫村出身だったのが縁で16年に夫婦で移住。当初は宿泊施設で料理に腕を振るったが、日本人にフランス語を教え、外国人には知夫の魅力を伝えるカルチャースクールを創設したいと思い立ち、まずはガイドの道を歩み始めた。

 コロナ禍で2020年4月から遊覧船を中止していたべんてん丸の下広幸将(たかまさ)さん(39)は「地元で腰を据えて仕事をするダヴィッドさんを応援したい」と運航再開を決意。通常の赤壁観光は陸路で崖の上まで行ってのぞき込むが、下広さんは「下から見ると迫力がある。乗った人には絶対に『良かった』と言われる」と自信を持つ。

 ゴメスさんは「欧米の人は東京や京都とは違う昔の日本を求める。波に乗れば多くの人が来てくれるだろう」と、訪日客を心待ちにしている。

 遊覧船は6人まで1万2千円。定員は14人で1人増すごとに1500円の追加料金が必要。問い合わせは知夫里島観光協会、電話08514(8)2272。