まとめ買いを促すセールの準備を進める店員=松江市浜乃木2丁目、酒ゴリラ松江乃木店
まとめ買いを促すセールの準備を進める店員=松江市浜乃木2丁目、酒ゴリラ松江乃木店

 ビール大手4社が出荷価格を最大10%程度値上げする10月1日を前に、山陰両県の小売店で商戦が熱を帯びる。かけこみ需要の反動減は避けられず、利益確保へ仕入れを増やして安売りを展開。在庫量に限界がある飲食店は経営圧迫と価格に敏感な消費者心理とのはざまで料金設定に悩む。

 酒小売の酒ゴリラ松江乃木店(松江市浜乃木2丁目)は今月中旬、ビールや発泡酒といったビール類の仕入れ量を通常時の倍にした。競合店の店頭価格を念頭に売れ筋12種のセール価格を、1ケース(350ミリリットル、24缶)当たり100円値下げし、税別2498円に設定した。勝部千草店長は「この価格で出したことはない。もうこれ以上下げられない」と話した。

 セール初回だった15日からの5日間は、売り上げが想定通りの前年同期比1・5倍となったが、セール期間外が落ち込み、前年同月比では伸びていない。「利益が薄い分、大量に売らなくては」と29日から5日間の次回でさらなる上積みを目指す。

 松江市内の酒卸業者は、山陰両県の小売業者からの受注量が前年同月と比べ1・5倍になった。在庫量は通常時の倍となる6日間分を確保して品切れを防ぐ。担当者は新型コロナウイルスの急拡大で消費が冷え込み、2カ月分の在庫を抱えた2021年末の記憶がよぎり、さばききれるかに神経をすり減らしている。

 買いだめができない飲食業者の悩みはさらに深い。海鮮れすとらん四季庵米子店(米子市両三柳)は、夏に主要メニューを値上げしただけに、ビールの上昇分は吸収する覚悟を決めた一方で、松江市内で複数店舗を展開する飲食業者は値上げに踏み切る。経営者は客離れの不安を抱えつつ、「上げないと無理だ」と話した。

 (今井菜月、高見維吹)