「にっぽんの宝物プロジェクト」体験セミナーでヒット商品開発の可能性を探る参加者=松江市朝日町、島根銀行
「にっぽんの宝物プロジェクト」体験セミナーでヒット商品開発の可能性を探る参加者=松江市朝日町、島根銀行

 地方に眠る原石を日本全国、世界に通用するヒット商品に育てる「にっぽんの宝物プロジェクト」の体験セミナーが松江市朝日町の島根銀行本店で開かれ、ヒット商品の開発を目指す島根県内の44事業者が参加して異業種連携の可能性などを探った。セミナーの盛況ぶりを受け、島根銀は地元発の特産やブランド品の誕生を期し、次回イベントの開催を検討する。

 プロジェクトは、(株)にっぽんの宝物(東京都)が開く多業種交流を兼ねたセミナーやグランプリ表彰を通じ、生産者だけでは気付かない商品の魅力や可能性を、プレゼンテーションなどを重ねながら多様な視点から高め、地域資源の磨き上げを目指す企画だ。

 プロジェクトで生まれた品を表彰する「グランプリ」は地方自治体や金融機関と連携し、地域ごとの地方大会、全国大会、世界大会と段階的に実施する。佐賀県の窯元と老舗旅館のコラボで生まれた有田焼プリンや、山形県の魚介と愛知県のミニトマトを掛け合わせたパエリアといったヒット商品が次々と現れ、同社のECサイトなどで売り出されている。

 全国展開のプロジェクトにもかかわらず、山陰は未開の地。島根銀が企業支援にも役立つとして、松江青年会議所などと実行準備委員会をつくり、体験セミナーを開いた。

 事業者は参加費無料の8月26日のセミナーで、にっぽんの宝物の羽根拓也代表取締役を講師に、時代に求められている商品のあり方や磨き上げのノウハウ、PR法などを学んだ後、4社一組でグループ討議。講義の内容を踏まえ、異業種同士で意見交換や悩み事の共有、共同のビジネスにつながるヒント探しに花が咲いた。

 島根銀はアンケートで満足度を調査。31者が回答し「とても良い」21件▽「良い」9件▽「普通」1件▽「良くない」0件▽「全く良くない」0件ーと好評を博し、「参加費が有料でもグランプリに参加したい」といった声も多く寄せられたという。

 参加者のうち、食物アレルギーや宗教・思想上の食の禁忌への総合プロデュースを手がける「Food Marico(フードマリコ)」(松江市津田町)の上田まり子代表は「異業種の企業を知ってはいても、自ら交流を持とうと動くことはなかなかできない。つながりをつくるいい機会だった」と振り返った。

 手応えを覚えた島根銀は、島根県内でグランプリの誘致を検討し、行政に働きかける。同行企業支援室の原田和幸室長は「それぞれにじっくり向き合う事業者支援も重要だが、取引の有無を問わず、地域を巻き込んで全体を元気にする支援も大切。両輪で進める土台作りに向け、(地方大会を)実現させたい」と意気込んだ。