立ち往生し、動かなくなった車列=2017年1月、米子道
立ち往生し、動かなくなった車列=2017年1月、米子道

 寒さが強まり、本格的な冬の訪れを感じるようになった。例年、年末年始から2月にかけては、大雪が降る。積雪や路面が凍った時、車の運転は不安。ブレーキをかけた途端にタイヤが滑った、雪にはまって動けなくなったなど、ヒヤリとした経験を持つ人は多いだろう。雪道を安全に運転するために注意したいポイントや、車に載せておくと役立つアイテムを紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 気象庁は11月、世界的な異常気象の原因とされるラニーニャ現象が発生したとみられ、この冬は西日本を中心に気温が低く、日本海側では雪が多くなる可能性があると発表した。

 2018年2月初めの大雪では、松江市や出雲市では40センチ超、境港市では70センチ超の積雪となり、松江市から出雲市にかけての国道9号や雲南市内の国道54号では大渋滞が発生し、車が立ち往生した。2017年1月の大雪では、鳥取県内の主要道路で約700台が立ち往生し、鳥取県は自衛隊に災害派遣を要請した。暖冬傾向とは言え、大雪になると暮らしへの影響は大きい。

 予想外の事態が起きた際、冷静に行動するにはどうしたら良いのか。また、日頃からできる対策とは何か。ロードサービスや交通安全運動を行う日本自動車連盟(JAF)島根支部(松江市東津田町)推進課の安井俊久さん(59)と伊藤昇さん(51)に話を聞いた。

日本自動車連盟(JAF)島根支部の安井俊久さん(左)と伊藤昇さん

▷冬に多いトラブルとは
 寒い時期に多いトラブルを聞くと伊藤さんは「バッテリー上がりや脱輪、スリップによる交通事故が挙げられます」とした。

 バッテリーは使用しているうちに性能が落ちてくる。冬になり気温が下がると、より不具合が起きやすくなるという。定期的に点検を受け、真冬を前にした今なら、必要があれば速やかに交換するか、バッテリー液の補充をすることが大切だという。

 脱輪は、路肩の段差や溝が雪で埋まって見えなくなり、生じることが多い。ガードレールや縁石がない道路を運転する時は「路肩に溝があるかもしれない」と考え、端に寄り過ぎないよう注意したい。

 タイヤのスリップによる事故を防ぐには、普段より車間距離を長くとったり、スピードを抑えたりすることが大切。ブレーキやアクセルを急に踏み込むのではなく、ゆっくりと徐々に踏み込むのもポイントだそう。

 伊藤さんは「AT車の場合、発進する時は最初からアクセルを踏むのではなく、ブレーキから足を離すことで自動的に前進する機能(クリープ現象)を使い、徐々にアクセルを踏む。ブレーキをかける時も、アクセルを離してすぐにブレーキを踏むのではなく、アクセルを離した後のエンジンブレーキを利用し、スピードを落としてからゆっくりとブレーキを踏むと良いです」と、アドバイスする。アクセルとブレーキの操作は、雪道運転のポイントだ。

大雪に見舞われた境港市の様子=2018年2月、境港市本町

▷特に注意が必要な場所は?
 交差点付近は特にスリップ事故が起きやすく、より注意したい。「人が歩くことで横断歩道の雪が踏み固められ、多くの車が停止や発進を繰り返すことで車道の雪も固まる。交差点付近はほかの場所と比べて滑りやすくなっています」と伊藤さん。交差点付近では特に、スピードを落とす▽車間距離を長くとる▽早めにブレーキをかけ始める―を心掛けたい。

 交差点以外でも、日光が当たりにくい山間部の道路や風通しが良いトンネルの出入り口、橋の上などは気温が低く、路面が凍りやすいため、慎重な運転が必要。

 路面が凍結する「アイスバーン」の状態も、タイヤがスリップしやすい。また、一見道路が濡れているだけのように見えるが実際は路面の水が凍っている「ブラックアイスバーン」にも気を付けたい。雨の日と同じ感覚で運転しないよう、路面の色が濃くなっていたら「濡れているのではなく、凍っているかもしれない」と意識しよう。

凍結した路面

▷備えておくと役立つグッズ
 積雪時や降雪時のトラブルに備え、車に搭載しておくと良いものは何か。伊藤さんは「タイヤチェーンや毛布、スコップ、ブースターケーブルなどを載せておくと役立ちます」と話す。

 タイヤチェーンは載せておくだけではなく、あらかじめ使い方を確認しておくことが重要。いざ装着しようとしても、着け方が分からなければ意味がない。雪が積もっていたり、ふぶいたりしているとパニックになってしまうことも。伊藤さんは「天気の良い日に駐車場などで、装着する練習をしておくと安心です」とアドバイスした。ブースターケーブルについても同じく、使い方を知っておきたい。

 毛布は、立ち往生している時やエンジンが始動しなくなった時、防寒に役立つほか、雪道でタイヤが空転してしまうような時にも使える。雪にタイヤが埋もれ、アクセルを踏んでも空回りして車が動かせない時、タイヤと雪の間に毛布をかませると脱出できることがある。いざという時のために車に載せておくと安心だ。

▷一酸化炭素中毒を防ぐには
 立ち往生してしまった時やスキー場付近など雪深い場所で車内にとどまる時は「一酸化炭素中毒に注意が必要」と伊藤さん。防寒のためにとエンジンをつけたままで過ごしがちだが、車の周囲に雪が積もり、車のマフラーがふさがれてしまうと、排気ガスの抜け道がなくなる。すると車内の一酸化炭素の濃度が上がり、中毒症状として頭痛やめまい、吐き気が生じ、意識を失ったり死に至ったりすることもある。ガスは目に見えず、臭いもしないため、気づくのが遅れてしまうことが多いという。

雪道で動けなくなった時は、マフラー付近の雪をこまめにチェックするのが大切

 吹雪の中で渋滞に巻き込まれ動けない時や、豪雪地帯で車中泊をする場合は、車の周辺に雪が積もっていないかこまめに確認し、積もっていればスコップなどでかき出すことが大切。たまに車内の空気を入れ替えることも効果的だという。大雪になると、ホームセンターなどでスコップが売り切れる。車用に早めに準備しておきたい。

 安井さんは「毎年、雪が降り始める12月や1月はロードサービスの出動が増えます」と話す。いざという時に落ち着いて対応できるよう、注意すべきポイントや役立つグッズ、安全運転のこつを押さえておきたい。

▷冬に心掛けたい「猫バンバン」
 雪道の運転とは違うが、冬の運転前に気をつけたいのが猫。寒くなってくると、温かい場所が好きな猫が車のエンジンルームに入り込むことがある。エンジンを切った後のエンジンルームは熱がこもっていて暖かい。猫が入り込むのも分からないではないが、困るのはエンジンをかける時。エンジンルームに猫がいる状態でエンジンをかけると、回転部分に巻き込んでしまう恐れがあるという。

小さな命を守るため、乗車前の猫バンバンを心掛けたい

 エンジンルームにいる猫は、ドライバーが車に乗っても気づかず、そのままエンジンルーム内にいることがある。
 そこでお薦めの対策が「猫バンバン」。猫は警戒心が強く、ボンネットをバンバンと軽くたたくと驚いてエンジンルームから出てくる。運転する前は「エンジンルームに猫がいるかもしれない」と考え、意識的にボンネットをたたくようにしたい。
 野良猫が多い地域に住んでいる人は特に、エンジンをかける前にボンネットを軽くたたく習慣をつけておくと良さそうだ。