衆院予算委で答弁する山際経済再生相。右手前から2人目は岸田首相=18日午前
衆院予算委で答弁する山際経済再生相。右手前から2人目は岸田首相=18日午前

 この程度の記憶力と、説得力に乏しい言語能力の持ち主に、物価高騰対策や新型コロナウイルス禍で傷ついた日本経済の立て直し、岸田文雄首相の目玉政策の「新しい資本主義」を担わせていいのか。まさに閣僚の資質が問われている。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡る山際大志郎経済再生担当相の説明が連日の国会審議で、野党から激しい批判を浴びている。これだけ政治問題化しているにもかかわらず、自身で疑念を晴らそうという意思を感じられず、メディアなどから〝証拠〟を突き付けられるまで認めないからだ。「後出し」と糾弾されても仕方あるまい。

 2016年にネパールで開催された旧統一教会関連団体の国際会議への出席を問われ、山際氏は「報道を見る限り、出席したと考えるのが自然だ」とようやく認めた。その後の衆院予算委員会で、本人は事務所で1年を目途に資料を整理していることを理由に「記憶になかった」と答弁したが、何十年も前の話ではない。しかも一般的にはなじみの薄い土地への海外出張である。信じ難い記憶力ではないか。

 18年に教団が主催するイベントに出席し、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁と面会した事実を認めた際も「マスコミから指摘されて(教団のウェブサイトに掲載されている)写真を見て、会ったことがある記憶と合致した」と発言している。これもわずか4年前で、明確に覚えていないこと自体が疑わしい。自民党が所属議員に実施したアンケートにも報告漏れがあり、外部の指摘などを受け追加報告した。

 そもそも山際氏は、内閣改造で続投する前から問題があった。参院選の街頭演説で「野党から来る話は、われわれ政府は何一つ聞かない」と言い放ち、謝罪・撤回を余儀なくされている。改造時も、山際氏は教団側との「接点」をあいまいにしたまま、続投が決まってから認めた。一連の対応を見れば、不実を重ねてきたのは明らかだ。

 ところが、今後も「新しい事実が出てくる可能性」に平然と言及するところは、現状を深刻に受け止めていない証左だ。木で鼻をくくったような発言を繰り返す映像が、間違いなく政治不信に拍車をかけている。

 こんな山際氏を岸田首相は「今後は一切関係を持たないと述べている」「理解が得られていないなら、引き続き政治家として自らの責任で丁寧に説明を尽くす必要がある」と擁護する。山際氏を更迭すれば、旧統一教会問題などで新事実が発覚するたびに、ドミノ倒しのように閣僚らが辞任に追い込まれる事態を恐れているのかもしれない。

 一方、寺田稔総務相や秋葉賢也復興相には、政治団体が妻ら親族に事務所賃料を支払っていた事実が判明した。「政治とカネ」に関する疑念には、十分な資料を基に説明させる、それが首相の任命責任である。

 「閣僚の資質」の大前提となるのは、国民に対する誠実な姿勢ではないのか。だが、それとは正反対の言動を繰り返す閣僚が居座っている。首相は所信表明演説で、「厳しい意見を聞く姿勢」が初心と強調した。閣僚としての資質も自覚も欠く人物を放置すれば、「信頼と共感の政治」の看板に偽りありと言わざるを得ない。とるべき選択は、まず山際氏に辞めてもらうことだ。