彩りも豊かなお弁当
彩りも豊かなお弁当

 「心身にやさしい」山陰両県の店を紹介する企画の第3弾。今回は無農薬栽培の野菜を手がける「LUCK HILL(ラックヒル)」(鳥取県大山町長野)を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)

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 兵庫県出身の吉岡大輔さん(33)が鳥取県大山町長野の畑、計1ヘクタールで約50種の野菜を栽培する。農業研修を受けていた時、農薬を大量散布する栽培方法に疑問を持ち、自分の畑を持ってからは農薬を使わずに野菜を栽培している。

吉岡大輔さん

▷旬の野菜使った料理やジュース イベントで

 

 松江、米子両市内の朝市で販売するほか、オンラインショップでも購入できる。朝市では野菜だけでなく、吉岡さんオリジナルの野菜料理や野菜スイーツを並べている。人気商品は、旬の野菜を使った「コールドプレスジュース」(1杯400円前後)。今の時期はトマトやリンゴ、ビーツ、ニンジンなどを使っている。ほかにもポタージュ、野菜の粉末を使ったクッキーなど農家ならではの商品を販売し、客を楽しませている。

朝市に出店した吉岡さんの「店」

 吉岡さんが出店しているイベントに足を運んでみた。この日はケールを使ったスムージーや、彩り豊かな弁当を販売していた。

朝市で接客する吉岡さん

 スムージー(430円)を飲んでみた。ケールのほか、バナナや豆乳、甘酒が入っている。ケールの爽やかな味にバナナの甘みと豆乳のクリーミーな味わいがぴったり。「こんな味になるんだ」と驚いた。手軽においしく野菜を摂取できてうれしい。

グリーンスムージー

 弁当はその日、用意できる野菜を使っておかずを作り800円前後で販売している。当日はビーツのきんぴら、レンコンの酢漬け、ワサビ菜のおひたし、黒豆など7種類のおかずが入っていた。ビーツのきんぴらは初めて食べたが大根のような食感に、ほんのりと甘辛い味付けがよく合っていておいしい。レンコンやワサビ菜はシャキッとした食感で、かむたびに野菜の香りが口に広がった。

彩りも豊かなお弁当

 野菜の中ではビーツやニンジンが人気で看板商品という。ニンジンやビーツは葉を切った状態で売られていることが多いが、せっかく食べてもらうなら葉っぱも味わってもらいたいと、葉が付いたままで販売している。吉岡さんは「かき揚げにしたりソテーにしたりするのがお薦め」と教えてくれた。

葉っぱもつけたままで販売している野菜

▷農薬や化学肥料 使わないため試行錯誤

 吉岡さんは農業に従事する前、養護学校の教員として兵庫県で働いていた。昔からキャンプ、スキーなどアウトドアが好きで、自給自足の暮らしや、天気がいい日は外で働く生き方に憧れがあり2015年、島根県に移住した。県内の農家で2年半、農業研修を受けた後、趣味のスキーでよく訪れていた大山エリアに移り住んだ。家の近くには梨園の跡地があり、畑として使おうと譲り受けた。

 最初は「農業に関する知識が全くなかった。農薬のことも知らなかった」と吉岡さん。少しずつ農業を知る中で農薬を大量散布する栽培方法に疑問を持つようになり、無農薬で栽培する方法を模索した。

畑を案内する吉岡さん

 野菜は虫に食べられにくくするため、皮が固い品種を多く栽培している。化学肥料も使わずに栽培し、草や木を燃やした灰や落ち葉を肥料として使っている。

 種にもこだわりがある。新しい野菜を育てる時は市販の種を購入して育てるが、2回目以降は種を摘み取り、栽培に使っている。市販の種は中国、イタリア、米国などほとんどが海外産で「より安心して食べられるものを作りたい」との思いから種を摘み取るようになったと言う。

種からこだわって栽培された野菜

 7月には飲食物の営業許可を取り、イベントでのオリジナルメニュー販売に力を入れている。地元農家が自ら料理やお菓子を作り販売するのは珍しい。吉岡さんは「農家だからこそ作れるメニューがあると思う。食を通して大切なことを伝えていきたい」と話した。既存の枠にはまらず新たな挑戦を楽しむ吉岡さん。今後の新メニューも楽しみだ。

 オンラインショップでは旬の野菜を詰め合わせたセットなどを販売している。Mサイズが1850円、Lサイズが3500円(いずれも送料抜き)。今の季節はナスやゴーヤ、ジャガイモ、ピーマン、サツマイモといった野菜を入れている。秋から冬にかけてはニンジン、ビーツ、カブといった根菜が中心になる。