中国共産党大会が閉幕し、今後5年間、国政を担う新指導部が発足した。異例の3期続投となった習近平総書記(国家主席)は党中枢に腹心を登用し、「1強体制」をさらに固めた。米国に比肩する「社会主義強国」づくりに向け、強権政治を続けるのは確実だ。

 日米同盟を基軸としながら、軍事力、経済力を強める隣の大国といかに付き合うか。日本にとって極めて重要な外交・安全保障の課題だ。中国の強引な海洋進出や人権侵害、台湾への軍事威嚇は容認できない。

 岸田文雄首相は習政権が言行一致で国際ルールを守り、平和的発展を目指すよう促す必要がある。両首脳は11月にインドネシアで開かれる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)などの機会を利用して対話を重ね、日中共生に向けた意思の疎通に努めるべきだ。

 党大会では、習氏が不動の権力と権威を固めたことを意味する「二つの確立」を強調。党中枢の政治局常務委員7人のうち李克強首相ら4人が退任し、習氏の側近、李強・上海市党委員会書記らが新たに任命された。

 王毅国務委員兼外相は政治局入りし指導部の外交担当トップになるとみられる。習氏の下で強硬な「戦狼外交」を指揮してきた王氏は元駐日大使で、日本語が堪能な知日派だ。かえって日本に強硬との見方もあるが、習氏の対日外交政策の決定に際して重要な役割を担いそうだ。

 9月の日中国交正常化50周年の祝賀メッセージで、岸田氏は「建設的かつ安定的な関係の構築を進めたい」、習氏は「中日関係の発展を非常に重視している」と述べ、両首脳は日中関係の重要性を確認した。

 米主導の経済安全保障政策で中国切り離しの動きがあるが、日本の経済界は当惑気味だ。経団連の十倉雅和会長は「日本、世界は中国なしではやっていけない」「協調と競争を使い分けなければならない」と述べた。

 中国のサプライチェーン(供給網)への過度な依存や高度な技術の中国への流出は抑制しながらも、日中に互恵をもたらす経済貿易関係の維持を図るバランスの取れた経済安保戦略が必要だ。

 習氏は党大会の活動報告で「武力行使の放棄は約束しない」と述べ、党規約に「台湾独立に断固反対し、抑え込む」と盛り込んだ。中国が米欧日などの台湾接近を独立志向の現政権支援と警戒していることの表れだ。

 「世界一流の軍隊づくり」を目指す習政権は国防費を年々拡大し、今年6月には台湾をにらむ3隻目の空母「福建」を進水させた。中国の軍事力増強に伴い、万一の台湾有事への警戒は必要だ。ただ日本の中国研究者や元外交官の間では、中国が米国の軍事介入と国際的な孤立を覚悟して近く台湾侵攻に踏み切る可能性は低いとの見方も少なくない。この分析は冷静に受け止めたい。

 岸田氏は党大会が閉幕した22日、オーストラリアのアルバニージー首相と会談し、安全保障に関する共同宣言を発表して中国をけん制した。

 また、岸田氏は「防衛力の抜本的な強化」を打ち出し、外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など3文書の改定を急ぐ。適切な防衛体制の検討は大切だが、過剰な防衛力強化が日中の軍拡競争の引き金とならないよう慎重に対応する必要があろう。