参院予算委で岸田首相(右)の答弁を聞く山際経済再生相=24日午後
参院予算委で岸田首相(右)の答弁を聞く山際経済再生相=24日午後

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点が次々と判明していた山際大志郎経済再生担当相が辞表を提出し、岸田文雄首相は受理した。国民の政治不信を招く一方だった山際氏のこれまでの対応ぶりを考えれば、辞任は遅きに失したと言わざるを得ない。

 教団と自民党議員の不適切とされる関係は、山際氏に限らない。

 党籍を離れているとはいえ、細田博之衆院議長についても関連団体の会合に出席し、あいさつするなどした上、国政選挙での教団票の差配に関与したのではないかと疑われている。死去した安倍晋三元首相も同様だ。

 教団の関連団体は国政選挙の際、自民党議員に「推薦確認書」への署名を要求し、実際に署名した議員もいる。

 党の政策立案への影響は皆無だったと言い切れるのか。地方議員への教団側の働きかけも指摘される中、山際氏の辞任によって、自民党と教団を巡る疑惑が幕引きとはならないことは自明だ。

 一方、岸田首相が認めたように任命権者として首相に責任があるのは当然で、本来ならもっと早期に更迭を決断すべきだった。

 山際氏については、8月の内閣改造で首相が留任させた直後から教団との関係が問題視されていた。

 しかしながら、10月の臨時国会開会後もそのまま閣僚ポストにとどまらせたのは、首相自身が任命責任を追及されるのを回避する保身意識が働いたとみられても仕方あるまい。

 山際氏は、報道で教団との接点が指摘されると追認するという状況が続き、21日には教団トップの韓鶴子(ハンハクチャ)総裁と集合写真を撮影していたことが明らかになった。

 それでも岸田首相は山際氏の辞任に先立つ参院予算委員会で更迭を否定。「予算委で質疑を受けている最中だ。丁寧に答えるのが閣僚の役割だ」と述べていた。

 共同通信の世論調査で62・7%が「閣僚を辞任すべきだ」と答えている。首相の一連の答弁からは危機意識が伝わらず、それがかえって国民の不信感を高めたと言えよう。

 予算委から数時間後、山際氏は辞表を首相に提出した。事実上の更迭とみられるが、国民の厳しい目が向けられている自民党と教団の関係断絶を目指す以上、首相は更迭であることを明確に打ち出すべきだった。

 もし首相にためらいがあったとすれば、政府や自民党の要職にあって教団とのつながりが指摘される所属議員に対しても、同様の判断を迫られる可能性を懸念したためではないか。党内の反発を恐れた内向きの論理では、国民の信頼を回復できないと肝に銘ずるべきだ。

 今後、岸田首相に求められるのは、「推薦確認書」に署名した議員の確認だ。首相は「自民党の政策に影響があったとは思えない」と答弁しているが、点検を議員個人に任せていて、党としての実態究明には消極的だ。先に行った自民党調査では具体的に尋ねておらず、首相発言は「推測」に過ぎない。

 「私が責任を持って、未来に向けて問題を解決したい」。首相はそう述べて、教団側の霊感商法や高額献金による被害者救済の法整備に努める考えを示した。当然の取り組みではあるが、自民党が抱えたままの疑惑に目をそらしていては、「信頼と共感の政治」は成り立つまい。