新型コロナウイルス禍で落ち込んだ観光需要の回復を狙った全国旅行支援が10月11日、全国で始まった。支援は県民割を全国拡大したもので、都道府県によっては独自の特典を上乗せするところもあるが、観光の形態によって補助の上限額が変わり、少し分かりにくい。全国旅行支援の概要と山陰両県の特典について、まとめた。(Sデジ編集部・吉野仁士)
全国旅行支援の期間中は宿泊料金を1人1泊あたり、40%を割り引く。割引の上限は旅行会社を通した交通費込みのパック旅行なら8千円で、交通機関を利用しない旅行商品や個人で宿泊施設を予約して宿泊する場合は5千円。さらに、飲食店や土産物屋で使える地域クーポン券が、平日の宿泊は3千円、休日は千円分配布される。
宿泊日とその翌日がともに休日(土日・祝日)の場合に「休日」扱いになり、それ以外は「平日」扱いとなる。土曜に宿泊する際は休日扱いで、金曜や日曜に宿泊するのは平日扱い。平日にパック旅行を利用して宿泊し、クーポン券を使い切れば、1泊旅行で最大1万1千円分がお得になる計算だ。
現在、大手旅行会社のホームページを複数見ると、いずれも全国旅行支援用の各都道府県へのパック旅行商品が掲示される。ただ、10月28日時点で既に「予算上限に達したため終了」との表示が、47都道府県の約8割を占め、既に全都道府県で終了したところも。東京のみ、旅行支援の開始が20日と少し遅かったが、それでもほぼ全ての旅行会社で東京行きの旅行商品が売り切れだった。旅行サイトや旅行代理店によって割り振られた予算が決まっているため、旅行支援開始直後から予約が殺到し、すぐに予算の上限に達したとみられる。鳥取県では平井伸治知事が27日、予算約4億円分を追加配分する考えを示した。
今から上限8千円の40%割引を受けるのは難しそうだが、個人で支援対象の宿泊施設に予約すれば、まだ上限5千円の割引は利用できる。また、各都道府県は国の旅行支援に合わせて観光客を取り込むため、独自の補助を打ち出すところもかなりある。山陰両県の旅行支援の仕組みを各県別に紹介する。
【島根県】
島根県は全国旅行支援に合わせ、11日に「ご縁も、美肌も、しまねから。」キャンペーンを開始した。キャンペーンに登録した宿泊施設の利用者に、宿泊料金の40%割引と、土産物店で使える「しまねっこクーポン」を配布する。期間は12月20日宿泊分までの予定で、予算額に達し次第終了する。キャンペーン開始当初は独自補助として、1万円以上の宿泊や旅行商品につきプレミアム飲食券(1人当たり千円分)を配布したが、早くも県が用意した枚数に達する見込みとなったため、11月3日で終了することになった。
キャンペーン利用には本人確認書類と、ワクチン接種済証明書(3回以上)または、陰性の検査結果通知書を提示する必要がある。
※(陰性結果の有効期間は宿泊日から数えて、PCR検査と抗原定量検査の場合は3日以内、抗原定性検査は1日以内に判明したもの)。
(例)旅行会社を通さない家族4人(大人)の休日1泊旅行で、宿泊代金1人1万3千円の宿泊施設を利用する場合
通常の宿泊料金は1万3千円×4人分で計5万2千円
1万3千円の40%は5200円だが、個人旅行だと割引上限は5千円のため割引額は5千円
5千円割引×4人分=2万円割引
支払金額は5万2千円ー2万円=3万2千円
さらに、休日なのでしまねっこクーポン千円分×4人分、4千円分のクーポン券が付き、各所で利用できる。平日に同じ条件で旅行すればクーポンが1人3千円になり、3千円×4人分で1万2千円とさらにお得だ。
キャンペーン対象の宿泊施設や旅行プラン、クーポンの利用可能店舗は公式サイト(https://goenbihada-shimanetabi.jp/)で確認できる。クーポンの配布は利用する宿泊施設、日帰り旅行の場合は旅行会社指定の施設である。
【鳥取県】
鳥取県は「ウェルカニとっとり得々割」と題したキャンペーンでの予約受付を11日に開始した。宿泊料金の40%割引と鳥取県プレミアムクーポン券の仕様は、島根県や全国と同様。これに加えて独自補助として、鳥取県内の観光施設や体験、日帰り温泉の利用料金を、上限千円で40%割り引く(1人1回利用あたり)。休日、平日の扱いや、利用条件は島根県と同様で、本人確認書類と、ワクチン接種済証明書(3回以上)または、陰性の検査結果通知書を提示する必要がある。
※(陰性結果の有効期間は宿泊日から数えて、PCR検査や抗原定量検査の場合は3日以内、抗原定性検査は1日以内に判明したもの)
鳥取県の独自補助では山陰両県外からの旅行者に「宿泊者特典割引券」が、宿泊旅行の際に1泊につき1枚配布される。山陰両県在住者なら、宿泊を伴わない、観光や日帰り旅行でも独自補助が利用可能。独自補助を活用して観光施設を利用する際、両県外からの旅行者は宿泊の際にもらう特典割引券を使用する必要があるが、両県在住者なら券は不要で、対象施設で住所が分かる本人確認書類と接種証明書を提示すれば、何カ所でも何回でも割り引かれる。
宿泊の際にもらえる「宿泊者特典割引券」。山陰両県在住者は券がなくても、本人確認書類や接種証明書を提示すれば独自補助が利用できる(鳥取県提供)
使い方は観光業支援のために山陰両県で打ち出された「We LOVE 山陰キャンペーン」とほぼ同じ。ただ、宿泊を伴わない観光や日帰り旅行の場合、当然、宿泊料金の割引はない上に、宿泊施設でもらえる県プレミアムクーポン券は受け取れない。キャンペーンの期間は12月20日宿泊分まで。
(例)旅行会社を通さない家族4人(大人)の休日旅行で、宿泊代金1人1万3千円の宿泊施設を利用した場合
通常の宿泊料金は1万3千円×4人分で計5万2千円
上限5千円で割り引くため5千円割引×4人分=2万円割引
支払金額は5万2千円-2万円=3万2千万円
クーポン千円分×4の4千円に加え、施設の利用料金が千円×4の4千円割り引かれるため、8千円分のお得がある。
(例)山陰両県在住の家族4人(大人)が日帰りでとっとり花回廊(鳥取県南部町鶴田、入園料は大人800円)を利用した場合
通常は入園料800円×4人=3200円
40%割引なので800円の40%の320円を割り引く。320×4人分=1280円割引
支払い金額は3200円―1280円=1920円
日帰りで宿泊を伴わないため、宿泊料金の割引やクーポン券の配布はなし
キャンペーン対象の宿泊施設や旅行プラン、クーポンや割引券の利用可能店舗は公式サイト(https://www.tottori-guide.jp/zenkokuwari-tottori/)で確認できる。クーポンや割引券の配布は、利用する宿泊施設や旅行会社指定の施設である。
特に鳥取県は日帰りでも割引を利用できる点がうれしい。他県への旅行でも様々なサービスが受けられるが、今から近場で楽しみたいと思っている人は、山陰両県のキャンペーンを活用し、地元の魅力をお得に再発見するのもいいかもしれない。













