2025年春に開館する鳥取県立美術館(倉吉市駄経寺町2丁目)の集客の目玉として、県が購入した美術作品が波紋を広げている。ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホル(1928~87年)の立体作品「ブリロの箱」で、価格は5点で約3億円。高額さと購入理由に疑問の声が上がっており、県教育委員会は「美術史を変えた作品」として理解を求めるが、3日に米子市内であった住民説明会でも賛否が相次いだ。 (藤井俊行)
「ブリロの箱」は米国のたわしの包装箱を模倣した木箱。大衆文化をモチーフとして、美術の価値観を変えたとされる。5点のうち1点(6831万円)は1968年の制作で、残る4点(各5578万円)は、ウォーホルの死後の90年に回顧展のために作られた。
県教委は「戦後の美術・文化の流れを示す優れた作品」で「前衛精神を示す」と評価。集客だけでなく、現代美術について考える機会となる教育的効果も高いとする。県外の大学教授や美術館長ら有識者でつくる外部委員会の了解を得て、9月に購入した。国内で所蔵する美術館は他にないという。
県条例では7千万円以上の動産購入時には県議会の議決が必要となるが、作品を1点ずつ購入したため対象外。購入決定後に報告を受けた県議会などから疑問の声が出たため、住民説明会を開くこととなった。
3日に米子市中町の市立図書館で開いた説明会には約60人が参加。7人が発言し「作品の価値が分からない人が多数だ」「集客の目玉になるだけの知名度があるのか」と否定的な声が上がる一方「美術品収集は知見のある人に任せた方が良い」と理解を示す意見もあった。
終了後、県教委美術館整備局の梅田雅彦局長は説明不足を指摘する声に対し「(購入方針が)表に出ることで作品の相場が変わる可能性があったため、購入決定後の報告になった」と説明。今後、南部町でも説明会を予定し「丁寧な対話を重ねてよりよい美術館をつくりたい」と話した。