長年休業していた浜田市金城町波佐の日帰り温泉施設「ほたる湯館」が、設備をそのまま生かして地元ゆかりの学僧・能海寛(1868~没年不詳)などの関連図書や郷土資料をそろえた文化・交流施設として再出発した。脱衣所の棚を本棚に使い、高齢者のサロン活動や創作ができるスペースも用意。住民の憩いの場となることを目指す。 (宮廻裕樹)
男湯と女湯の脱衣所の棚には、町出身の能海寛や劇作家・島村抱月(1871~1918年)の関連図書など1500冊を収蔵。図書は波佐文化協会や能海寛研究会が収集したり、寄贈されたりしたものという。地元の歴史を伝えるパネル20枚を並べたほか、江戸後期以降のたたら製鉄に関する6千点以上の古文書も閲覧できる。
15人程度が利用できる休憩所はプロジェクター付きで、会合を開いたり、歓談したりできるスペースに。浴場は地元産のかずらを使ったかご作りや、蜜蝋(みつろう)のキャンドル作りが楽しめる創作室にした。
ほたる湯館は、旧金城町が泉源掘削した温泉に、地元住民でつくる波佐・小国温泉館運営組合(隅田正三組合長、67人)が住民の出資などを受け、2005年にオープン。ただ、赤字経営が続き15年に休業し、新たに運営の委託先を募るも、応じる業者はなかった。
温泉再開は困難と考え、2021年、地元の文化資源を発信する拠点にしようと方針を変え、運営組合が整備してきた。隅田組合長は「学習拠点としての役割だけではなく、誰もが気軽に足を運んで交流できる場にしたい」と話す。
利用は無料。開館時間や休館日は定めておらず、前日までに予約が必要。問い合わせは隅田組合長、電話090(4697)2818。