ウォーホルの「箱」は美術か?-。鳥取県の平井伸治知事が17日、2025年春に開館する県立美術館(倉吉市駄経寺町2丁目)の目玉として県が約3億円で購入し物議を醸しているアンディ・ウォーホル(1928~87年)の立体作品「ブリロの箱」について、開館後に県民や来館者にアンケートをして価値を判断してもらう考えを示した。ポップアートを巡る論争が県民や知事を巻き込み、波紋が広がっている。
定例記者会見で平井知事は「現代美術について議論が起こり、賛否両論を受け止めて考える時期に入っている」と指摘。「(作品を)保有し続けることの是非を投票してもらい、判定したらいいのではないか」と持論を述べた。作品の価値を巡って賛否が渦巻く現在の状況について「まさに現代美術史がたどってきた道筋を私たちが歩いている」と述べた。
また、ブリロの箱購入で減った県の美術品取得基金について、本年度は補充しないと表明。通常は年度末に上限の5億円になるように補充してきたが、約5千万円のままとなる。「(これ以上)議論を呼ぶような作品購入はちょっと待ってくれという考え」という。
投票という知事の提案に対し、県教育委員会美術館整備局の尾崎信一郎美術振興監は「一つの案だと思う。われわれは買って良かったと確信しており、作品を分かってもらえるよう努力したい」と話した。
ブリロの箱は米国のたわしの包装箱を模倣した作品。大衆文化をモチーフとして、美術の価値観を変えたとされる。県は5点購入し、1点(6831万円)は1968年の制作。残る4点(各5578万円)はウォーホルの死後の90年に回顧展のために作られた。
購入を巡り金額や価値に疑問の声が上がり、県教委が住民説明会を開く事態となった。7千万円以上の動産購入時には県議会の議決が必要となるが、作品を1点ずつ購入したため対象外となった点も疑問視されたが、県教委は「購入方針が表に出ると相場が変わる可能性があった」とし、手続きに問題はなかったとしている。 (岸本久瑠人)