戦時中に島根県奥出雲町三成地区で発生した大火の際、すんでのところで三成小学校から運び出され、焼けずに済んだグランドピアノが今も校内に残る。故障すると部品調達が難しく普段弾かれることはなくなったが、「大火の証人」として大切に保管されてきた。その貴重なピアノを聞いてもらおうと、27日午後2時に同校体育館でコンサートがある。 (狩野樹理)
火災は1945年4月18日に発生した。町誌によると、午後1時前、三成駅で児童が出征者を見送り、学校に戻ってきた時だったという。火は強風にあおられ、たちまち燃え広がり、一帯は炎に包まれた。三成小にも火の手が迫る中、ピアノは重要書類などと一緒に運び出され、その後、校舎は全焼した。
ピアノは36年に寄贈された。大火を逃れた後も使用され、81年に新しいピアノが購入されたのをきっかけに運用を終えた。以来、体育館の隅に置かれていたが、町民が身の危険を顧みず守ったピアノの歴史と音色を広く知ってほしいと、三成小PTAが今回のコンサートを企画した。
4年生の川島苺香さん(10)は「ピアノは入学前からあった。あまり音を聞いたことがないので楽しみ」と話した。雲南市大東町在住のピアニスト・板東沙耶香さんが出演し、大火を逃れたピアノでの演奏は、保全を考え1曲のみ披露する。入場無料。