脇や顔など生えてほしくない場所に生える毛を「ムダ毛」と呼び、脱毛や処理にいそしむ人が増える中、ありのままの写真を投稿し、自分らしさを発信する松江市出身のファッションモデルがいる。HIBARI(ひばり)さん(26)。性別や生き方と同じように「ムダ毛を処理するかどうかは自分で自由に決める」という「ボディーヘア・ポジティブ」の概念を体現する。
ひばりさんは芸人を目指し、20歳で上京。所属した芸能事務所を辞めると同時に、現在の事務所の社長に誘われ、2020年ごろからモデルの仕事を始めた。
当初はムダ毛の処理をしていたが、元恋人の脇毛を「かわいい」と感じたことをきっかけにやめた。交流サイト(SNS)でも、毛を生やしたままの写真を投稿するようになった。
「毛も個性だ」と強く主張したいわけでも、思い入れがあるわけでもない。「どっちもアリだよね」という「ゆるい考え」だ。
「体毛は無駄だと思えば無駄だし、無駄じゃないと思えば無駄ではない。一つの物をかわいいと感じる人もいれば、ダサいと感じる人がいるのと同じ。毛に関する捉え方も自由でいい」
周囲の反応はさまざまで、SNSでは「脇毛の写真をもっと上げて」との声もあれば、「脇毛が見えてますよ」と注意されることも。「女性は処理するのが当然という無意識の常識が世間で根付いている」と感じる中、受け入れてくれる人に会うのはうれしい。
ひばりさんは、いわゆるスレンダーな「モデル体形」よりは少し大きめだと自認する。その点についても「そういうのもアリだよね」と感じてもらいたいのだという。
ありのままの自分を大切にするのは、原体験がある。固定観念からか、恋愛対象が同性であるという自覚がなかった。上京して自分と同じような人に出会い、「普通なんだ」と思うと同時に、本来の自分にようやく気付けた。自分が心躍る環境に足を運ぶことの大切さを知った。
だからこそ、ひばりさんがモデルとして表現したいのは、「自分を楽しむこと」だ。他人の目が気にならなくなるには、「自分が満足できるまで人生を楽しむことだ」と思っている。
(坂上晴香)