付き添いの手を借りながら石見神楽の衣装に触れる参加者=益田市駅前町、益田駅前ビルEAGA
付き添いの手を借りながら石見神楽の衣装に触れる参加者=益田市駅前町、益田駅前ビルEAGA

 島根県西部の伝統芸能・石見神楽を視覚や聴覚に障害がある人にも楽しんでもらおうと、益田市観光協会が3日、同市駅前町の益田駅前ビルEAGAでモニターツアーを実施した。参加者は衣装や小道具に手で触れて感触を確かめ、音声ガイドや字幕など工夫された神楽舞を堪能。誰でも気兼ねなく楽しめる「ユニバーサルツーリズム」の観光商品として、来年度の定期公演に組み込む予定だ。 (藤本ちあき) 視覚、聴覚障害者や付き添いの計15人が参加。観光協会スタッフの案内で、高津神楽社中が披露する演目「鍾馗(しょうき)」の衣装や茅(ち)の輪などの小道具に触れ、手触りや重さを確かめた。公演中は「鍾馗が茅の輪を構え見えを切る」など具体的な動作を、イヤホンを通して音声で説明したほか、モニター画面の字幕や手話通訳士の手話で口上を伝えた。疫神が登場する場面は赤色の照明を使うなど、場面の変化をライトの色で表現した。

 参加した視覚障害者の大道進一さん(81)は「衣装を実際に着て体を動かしてみたがとても重く、これを着て舞うのは大変だと実感できた。音声があり、状況がよく分かった」と喜んだ。

 同協会はユニバーサルツーリズムへの体制を整えるため2年前に研究を始めた。本年度は観光庁の補助事業を活用し、松江市のNPO法人プロジェクトゆうあいなどの協力を得て、ユニバーサル仕様の石見神楽公演のモニターツアー実施にこぎ着けた。来年度の「石見の夜神楽益田公演」で上期下期に各1回組み込む考えで、観光協会の仲田千恵理事務局長は「ようやく形ができた。意見を取り入れて、実施に向けて改善していきたい」と話した。