ビームス25周年を記念したショッピングバッグ
ビームス25周年を記念したショッピングバッグ

 企画を生み出す際、通常は「Q(クエスチョン、疑問)」に対する「A(アンサー、答え)」を会議し、考えていくことが多いと思います。実際、世の中にあふれる企画や商品も「A」を求めた結果、生まれたものが多いでしょう。

 しかし私はそうしません。「?」に対し、「A」ではなく「!(驚き)」をどう生み出せるかを常に考えています。世間の中の疑問やニーズといったQに対し、驚きがある提案を打ち出して「面白い」「なるほど」と思ってもらいたい。これは他のスタッフにも徐々に浸透しています。ビームスがひと味違った商品や企画を打ち出せる要因の一つかもしれません。

 その思考をするようになった一つのきっかけが、ビームスの創業25周年企画として挑戦したファッション誌を丸ごと一冊ジャックする企画でした。1976年創業のビームスは今年46周年を迎えました。幸運なことに私は25~40周年まで5年ごとの企画のプロモーションに担当者として携わることができました。それぞれに大きな苦労と成功、思い出があります。

 25周年企画の一つとしてメンズファッション誌「Boon」を一冊ジャックしました。通常の情報ページに掲載していただいたり、広告を掲載したりしましたが、140ページ以上ある当時の人気雑誌をジャックするといったことは前例がありませんでした。

 誌面のみならず一緒に商品企画をして店舗と連動する形をとり、登場するモデルやスナップ写真は全国のビームススタッフから募集するそれまでにない企画でした。2000年前後は洋服のみならず各企業とのコラボレーションを始めた時期で、ファッション領域だけではないビームス集団が世に知られるようになったきっかけになったと、振り返って感じるところです。

 通常の雑誌で伝わる情報以外に、企業として、集団として世の中に対し「!!!(こうきたか)」をファッションやカルチャー、クリエーティブ、デザインなどから、新たな表現を具現化できた瞬間でした。

 当時の私は「結果で話題をつくるしかない」という心境でした。その後、シリーズ累計37万部の人気書籍「BEAMS AT HOME」シリーズを手がけることになります。ビームススタッフのライフスタイルに密着し、500ページ近いボリュームでまとめたものです。1号目を作る際は、初の試みということもありスタッフから思っていたような協力が得られず大変苦労しました。しかし、1号目が完成し、みんなが目にすると「次の号に出たい」といった声が次々に上がるようになりました。

 何か新しいことに挑戦しようとするときはまず「道」をつくってみないと駄目なことがあります。そして巻き込みたい人たちに対し、膝を突き合わせて真摯(しんし)に向き合っていく。それが企画を成功に導く、一つの秘訣(ひけつ)かもしれません。

    =隔週月曜掲載=

 

 どいじ・ひろし ビーアット代表取締役、ビームス執行役員ディレクターズ バンク室長・コミュニケーションディレクター。ビームスで15年以上にわたってPR宣伝を担当してきた。出雲市多伎町出身。