50歳前後の人の一部には、当時の記憶が残っているかもしれない。架空の国を舞台に、「宇宙軍」が軍人と技術者の威信に懸けて、初の有人宇宙飛行に挑む姿を描いたアニメ映画『王立宇宙軍~オネアミスの翼』。1987年の公開から35周年を記念し、最新の映像や音声技術を駆使した「4Kリマスター版」が今秋、全国主要都市で上映された。

 デジタル技術がまだ確立していなかった時代、ロケットの噴射ではがれ落ちる氷の破片を1枚ずつ丁寧に描き切った圧巻の映像が注目された。公開当時に高校生だった筆者は地元に映画館がなかったため、鑑賞がかなわず、登場人物のせりふや音楽が入ったレコードを、家で繰り返し聴いていた。映画のテーマ曲や音楽の監修を、テクノポップの旗手・YMOの一員として一時代を築いた坂本龍一氏が手掛けたことも話題になった。

 映画では、誰と戦うのか分からない宇宙軍が国家の〝お荷物〟に...