古里に博物館贈り神社再興
「メガネの三城(みき)」を創業(そうぎょう)した多根(たね)良尾(よしお)(1905~86年)は島根県仁多(にた)町(現在(げんざい)の奥出雲(おくいずも)町)佐白(さじろ)の出身です。時代を先取りし、国内有数の眼鏡(めがね)小売りチェーンに成長させるとともに、都会に出てからも地元のことを忘(わす)れず自然史(しぜんし)博物館を贈(おく)り神社を再興(さいこう)するなど、古里の発展(はってん)に尽(つ)くしました。
父の三城(みき)實治(じつじ)は、広島県油木(ゆき)町(現在の神石(じんせき)高原(こうげん)町)出身。宮司(ぐうじ)を務(つと)めていた家柄(いえがら)で、佐白の多根家に入り、神職(しんしょく)のほかに印鑑(いんかん)づくり、時計の修理(しゅうり)などいろいろな仕事を器用にこなしました。
三男として生まれた良尾は、小学校を卒業後、兄の自転車店の手伝いなどを経(へ)て兵庫県姫路(ひめじ)市で就職(しゅうしょく)しました。3年間、機械工をして1930(昭和5)年、25歳(さい)の時に時計店を創業します。
1950(昭和25)年には時計、貴金属(ききんぞく)、眼鏡を販売(はんばい)する「三城時計店」を開業。10年後に眼鏡専業(せんぎょう)店に移行(いこう)し、社名を「メガネの三城」としました。
1973(昭和48)年、パリに出店。ファッションを楽しめるおしゃれなメガネ店「パリミキ」は、全国で人気のお店となりました。パリ出店を期して関東の店舗(てんぽ)名は「パリミキ」、西は「メガネの三城」として展開(てんかい)しました。
2022(令和4)年4月には社名を「三城ホールディングス」から「パリミキホールディングス」に変更(へんこう)。店舗名も「パリミキ」「メガネの三城」から「パリミキ」に統一(とういつ)しました。店舗数は国内に約650、海外は約100あります。
良尾が亡(な)くなった翌(よく)年の1987(昭和62)年、長男の裕詞(ひろし)が良尾の構想(こうそう)を受け継(つ)いで古里に宿泊(しゅくはく)施設(しせつ)を備(そな)えた奥出雲多根自然博物館を開館。
「宇宙(うちゅう)の進化と生命の歴史(れきし)」をテーマにした自然史博物館で、恐竜(きょうりゅう)のレプリカや世界の化石(かせき)、珍(めずら)しい鉱物(こうぶつ)などが展示(てんじ)してあります。
2005(平成17)年に、良尾の生誕(せいたん)100年を記念した胸像(きょうぞう)除幕(じょまく)式が佐白の志學荒(しがくこう)神社でありました。志學荒神社は子どもの志学、立志の神さまで、良尾が再興して八重(はちじゅう)の塔(とう)を含(ふく)む社殿(しゃでん)を建立(こんりゅう)。自宅跡(あと)には3階建ての交流施設を建てて、地域(ちいき)の人たちに残しました。
良尾の古里活性化(かっせいか)と青少年健全育成という強い願いは、着実に浸透(しんとう)しています。
















