2024年1月に閉店する一畑百貨店(松江市朝日町)について、親会社の一畑電気鉄道(同市中原町)が店舗建物を残し、県内外の小売店をテナントとして誘致し、商業施設として存続させる方針であることが10日、関係者への取材で分かった。6階まである建物のうち、買い物客の出入りが多い低層階の商業利用を軸に誘致交渉を進めている。
1981年開業の複合施設から引き継いだ店舗建物は地上6階、地下1階の鉄骨鉄筋6階建てで、延べ床面積は1万4千平方メートル。土地と合わせて一畑電鉄が所有し、松江市の市政運営の最上位計画「総合計画」で、中心市街地の重要施設に位置付けられている。
関係者によると、電鉄側は小売店を誘致して商業機能を維持する一方、多額に上る解体費用の負担や更地にした場合のJR松江駅前の景観悪化を避けたい考え。
6階の建物のうち、買い物客の出入りが多い地下1階から地上2、3階までを商業利用するテナント業者に貸し出す想定で、県内外の小売り業者数社と賃貸料などを含め交渉している。高層階についても活用策を模索しているとみられる。
山陰中央新報社の取材に対し、一畑百貨店代表取締役社長と一畑電鉄常務執行役員を兼ねる錦織要氏は「現時点ではお話しできないが、鋭意交渉している」と話した。
一畑百貨店を巡っては、経営不振を理由に6月、閉店を発表。これを受け、松江市が百貨店が立地するJR松江駅周辺に与える影響が避けられないとし、中心市街地活性化に向けたビジョンを練る対策チームを設けて検討する構え。今後のまちづくりを踏まえた対応が注目されている。
(多賀芳文、石倉俊直)