2023年の干支(えと)は「卯」(ウサギ)。ウサギは跳躍力に優れることから飛躍、向上を象徴する、縁起が良い動物とされる。縁起の良い一年にするため、山陰両県に潜む「ウサギたち」を訪ねた。(Sデジ編集部・吉野仁士)
縁結びにも一役買う?山陰に潜むユニークなウサギ特集<下>(Sデジオリジナル記事)
★「家兎胡枝花図(かとはぎず)」足立美術館(安来市古川町)

ハギの花の下で寄り添う、白や黒の毛並みをした3羽のウサギ。1羽は愛らしい表情でこちらを見つめ、2羽は何かがある左方向を向いている。絵でありながら、実物のようなふわふわとした毛並みが見事に表現され、思わず触りたくなる。
広大な日本庭園と近代日本画の巨匠・横山大観のコレクションで知られる足立美術館が所蔵する日本画(縦78・2センチ、横86・6センチ)。作者は兵庫県出身の画家、橋本関雪(1883~1945年)。中国の漢詩をテーマにした人物や風景画を描く一方、動物好きで知られ、イヌやネコ、サルやフクロウといった動物の絵も多く残した。
織奥かおり学芸課長(45)によると、関雪が描く動物画の特徴は表情。動物特有のかわいらしさだけでなく、何かを考えているような、人間味のある味わい深い表情を描くのが得意だという。家兎胡枝花図のウサギも、愛らしさの中に不思議な落ち着きが見える。ウサギがその表情でじっと見つめる先には何があるのか、見るものの想像力をかき立てる。

毛並みは細い筆で一本一本を細かく描き、絵の具をぼかしたようなタッチで写実的に描かれている。関雪の描く絵は専門家からも「筆の動かし方が分からない」と言われるほど独特で、そうして表現される唯一無二の絵が、関雪の魅力の一つだという。

偶然にも2023年は関雪の生誕140周年の節目で、8月31日~11月30日に企画展も行われる。織奥学芸課長は「動物たちが何かを訴えるような、不思議な雰囲気のある絵ばかり。ぜひ直接見に来館していただきたい」と話した。家兎胡枝花図は冬季特別展で展示され、2月28日まで見られる。開館時間は午前9時~午後5時で、入館料は大人2300円、大学生1800円、高校生千円、小中学生500円。年中無休。
★「コンチネンタル・ジャイアント・ラビット」愛宕山公園動物広場(出雲市平田町)

出雲市平田町の愛宕山公園動物広場には世界最大級の大型ウサギのリロ(3歳、オス)がいる。体長約60センチ、体重8キロと、一般的なウサギの2倍以上のサイズだが、家族連れから大人気。広場の「看板ウサギ」になっている。
リロはフランス原産とされる「コンチネンタル・ジャイアント・ラビット」。2009年から公園の競技場で駅伝大会を開催している実行委員会が、インターネット上で大阪府の牧場が販売しているのを見つけ、公園への恩返しのために購入、寄贈したという。委員会は毎年、公園に動物や絵を贈っている。
リロは9月17日、動物広場の小屋で一般公開された。飼育員の柳原和美さん(27)によると、大きさの割にはおとなしく、普段はじっとしていることが多い。ただ、食欲は旺盛で、特に白菜の葉を好んでよく食べるという。ストレスを与えないため、よく慣れた飼育員以外は触れないことになっているという。一般客は見学のみだが、子どもたちからは「おっきい」「かわいい」と常に人気だそうだ。

寒さに弱いため、雪が降り始めた2022年12月下旬からは、暖かい別の部屋に一時的に移され、見られなくなった。暖かくなる3月頃に再公開される予定で、柳原さんは「また見に来てほしい」と来場を呼びかけた。

愛宕山公園動物広場は年中無休で、入場料無料(餌やりは有料)。スタッフが常駐するのは午前8時~午後5時。