縁結びの御利益があるとのうわさもある「宍道湖うさぎ」=松江市袖師町、島根県立美術館
縁結びの御利益があるとのうわさもある「宍道湖うさぎ」=松江市袖師町、島根県立美術館

 2023年の干支(えと)は「卯(ウサギ)」。山陰両県のウサギを<上>に引き続いて紹介する。(Sデジ編集部・吉野仁士)

あんなところやこんなところに!?山陰に潜むユニークなウサギ特集<上>(Sデジオリジナル記事)

 ★白兎(はくと)神社(鳥取市白兎)

白兎神社の参道にあるウサギの像

 現存する日本最古の書物、古事記に書かれた神話「因幡の白兎(ウサギ)」と縁が深い、由緒ある神社。話に登場する「白兎神」を主神とし、境内では石像や砂像など、さまざまなウサギを見ることができる。

 神話では大国主命が八上比売(やがみひめ)へ求婚するために因幡へ向かう途中、ワニザメに毛皮をはぎ取られて泣いているウサギを見つける。かわいそうに思った大国主命がけがの治し方を教えると、ウサギは「八上比売はあなたの妻になると言うでしょう」と予言し、実際に八上比売は大国主命の妻になった、というストーリー。神話から白兎神には縁結びや医療の御利益があるとされる。

卯年に向けてリニューアルされた砂像。以前は手を取り合う大国主命と八上比売をウサギが見つめる砂像だった

 参道の入り口には神話を基にした砂像(高さ1・7メートル、幅3・4メートル、奥行き3・6メートル)があり、大国主命と八上比売が寄り添う前で、ウサギが寝そべっている。神社によると、地元の市民有志が、干支に合わせて12年ぶりにリニューアルした。早速、参拝客の撮影スポットになり、卯年に向けて機運が盛り上がっている。

 参道の両脇にはウサギの石像(高さ約20センチ)18羽がある。2足で立ち上がった姿や、跳ぶ最中の姿など、さまざまなウサギが並び、どれも愛らしい。社務所で販売する、良縁・子宝・繁盛・飛躍・健康の五つの縁を示す「結び石」を、鳥居の上に投げて置くと願いがかなうとされるが、ウサギの石像周辺に供えて祈る参拝客も多いという。

神社のいろんな所にウサギがおり、消毒液まで出してくれる

 

 権禰宜(ねぎ)の河上統一(のりくに)さん(41)は、12年前の卯年の1月は参拝客が例年の2倍になったと言い「せっかくの卯年なので、三が日以外にも多くの人にお参りいただければうれしい」と呼びかけた。

 

 ★宍道湖うさぎ 島根県立美術館(松江市袖師町)

ウサギが走る様子を表現した12羽の像。湖側から1、2番目のウサギ周辺だけ芝生が薄いのにはある理由が

 美術館横の岸公園の芝生上に並ぶ、ウサギのブロンズ像(高さ40センチ、幅30センチ)。ウサギが芝の上を駆け抜けて湖岸でたたずむまでの一連の動きを、12羽分の像を並べて表現している。いつからか、像にまつわる縁結びのうわさ話もささやかれる。

 像の多くは走る最中の姿。弧を描くように、約150センチ間隔で設置され、公園の一部の空間がそのまま作品の舞台になっている。宍道湖や夕日の景色と相まって、公園の表情をより豊かに演出する。

 美術館によると、作者は奈良県のマスコットキャラクター「せんとくん」の制作で知られる、彫刻家の籔内佐斗司さん(69)。美術館が依頼し、籔内さんが1999年9月、湖岸からイメージを膨らませて考案、制作したという。

 像の設置からしばらくして「湖側から2番目のウサギを、西を向きながらなでると良縁がある」とのうわさが口コミで広がった。出どころは不明だそうだが、女性を中心に多くの人が良縁目当てに公園を訪れるという。そのせいか、該当のウサギ周辺だけ芝が生えていない上に、触られ過ぎて頭や背中の色が変わってしまっている。さらに、ウサギにシジミの貝殻を供えると効果が倍増するという説もあるらしい。

湖側から2番目のウサギ。周囲には芝がなく、シジミの貝殻が多くある。作者の籔内さんは、作品を見た人によって自然とストーリーが付くことに関してとても喜んでいるという

 広報マネージャーの山根智子さん(54)によると、ウサギの周辺でプロポーズしたり、結婚式の前撮りをしたりする人が多く、実際にご縁の生まれる場になっている。美術館はこうしたうわさを歓迎し、宍道湖うさぎに関連したおみくじや置物といったグッズも販売中。山根さんは「ぜひウサギをなでに来てもらい、いろんな人との縁が生まれてほしい」と話した。

美術館の売店にある、宍道湖うさぎ関連の商品。おみくじに加え、ウサギと貝殻をモチーフにしためのうの置物など多彩だ

 せっかくなので、記者も良縁目当てに、宍道湖うさぎのおみくじを引いてみた。運勢は「大吉」だったが、肝心の縁や恋愛については「高望みはダメ、堅実な目標を大切に」「活気があるがムードに欠けるきらい有り」と手厳しい。縁をつかむため、今年は堅実に、ムードを意識しながらチャンスを待とうと思う。