生理中に腹部が痛む「生理痛」や、生理開始3~10日前から心身に不調が表れる「PMS(月経前症候群)」に悩む女性は少なくない。痛みや症状の程度には個人差があるほか、年齢を重ねるにつれて新たな症状が出てくる、重症になるといったケースもあるという。原因や対策について専門医に聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)
▽代表的な症状、原因、メカニズム
生理痛やPMSは人によって痛みの程度や症状が異なるが、代表的な症状や特徴は何か。島根県立中央病院(出雲市姫原4丁目)産婦人科の奈良井曜子医師に聞いた。

奈良井医師によると生理痛は1~2日程度、痛みが出て終わる程度の人もいるが、生理期間ずっと痛みが続く、生理前の排卵が起こる時期から痛み始めるといった程度が重い人もいる。症状が軽い人は1カ月のうち1~2日間、痛みを我慢すれば良いからと病院を受診しない人が多いと考えられるが、奈良井医師は「あまり我慢を続けると薬が効かなくなることがある」という。痛みを感じる場合は無理をして我慢するより、早めに鎮痛剤などを飲んで対処するのが良いという。
PMSの症状は下腹部痛や腰痛、便秘、むくみといった身体症状のほか、イライラする、物事に集中できないといった精神的な症状があり、ひどい場合は社会生活に支障が出るほどの不調が表れるという。症状は一般的に生理の3~10日前に出るといい、生理が始まると症状が治まる場合が多い。生理が始まっても気分の落ち込みやイライラが治まらない場合は、うつ病など精神疾患の可能性も考えられ、精神科や心療内科の受診も勧めるという。

▽対策は?予防するために心がけるといいことは?
PMSや生理痛が生じる原因は判明していないが、女性ホルモンの「エストロゲン」や「黄体ホルモン」の量の変化が影響していると考えられる。
PMSや生理痛の軽減には一般的に、ホルモン量を抑えて一定に保つ「低用量ピル」を処方する。患者の体質や要望に合わせて漢方薬を処方するなど別の方法で対応することもある。産後の女性には、子宮内に黄体ホルモンを埋め込む施術もできる。近年は医療技術の発達で、さまざまなアプローチが可能になっているという。
高校生など若い世代にはカウンセリングのほか、生活習慣を整えるアドバイスや薬の処方をする。PMSや生理痛の症状が重い患者に対しては、試験や大事な予定が入っている日に生理が来ないよう、ホルモン剤を使ってタイミングを調整することもできる。

▽自分でできる対処や予防
PMSや生理痛の改善、予防のために日常生活で心がけると良いことは何か。奈良井医師は「規則正しい生活を送り、アルコールやカフェインはなるべく控えると良い」と助言した。
PMSや生理痛だけでなく、さまざまな病気の改善、予防のため、十分な睡眠や運動、バランスの取れた食事といった習慣は大切にしたい。
また、ビタミンEに含まれる「γ(ガンマ)トコフェロール」はPMSの症状の一つである、むくみを緩和する効果が期待できるという。ガンマトコフェロールは大豆油やごま油、米油、菜種油、トウモロコシ油といった植物油から摂取できる。PMSに限らず、むくみに悩んでいる人は、無理のない範囲で食事に植物油を取り入れると良さそう。また、塩分はむくみの原因になるため、摂取しすぎないよう心がけると良いという。

▽症状がひどくなるのはなぜ?
これまでPMS、生理痛の症状がなかった人が症状を発症する、もともとあった症状が重くなるといったケースもある。原因は体調や体質の変化のほか、子宮内膜症などの疾患も考えられるという。異変を感じたら早めに病院で診断を受けたい。
PMSはホルモン量の変化だけでなく、環境の変化や緊張といった心的ストレスも原因になっていると考えられることから、奈良井医師は「思春期に(患者が)多いのでは」と推測する。「特に高校生など若い世代は、産婦人科に行くのは抵抗があると思うが、まずは相談に行くのが望ましい」とアドバイスした。確かに、高校生で産婦人科というのは抵抗があると思うが、不調や異変を感じたら専門医を受診したい。
PMSは体質や環境の変化、疾患など考えられる原因がさまざまで、症状も人によって異なる。一人で我慢せず、専門医やかかりつけ医に相談することが症状改善への第一歩だと感じた。